賛成か反対かという、単純な話ではない
皇室典範が改正された。
賛成か反対かと問われれば、僕は賛成寄りだ。
もっとも、どちらとも簡単に言い切れる話ではない。
ただ、このままでは宮家が立ち行かなくなり、皇室そのものが細っていく。
それを防ぐための改正だと理解しているから、そう悪い話だとは思わない。
麻生さんの血族を送り込むための布石ではないか、という見方もあるらしい。
でも僕は、それは穿ちすぎだと思う。
自分の子孫にどれだけ負担をかけることになるかご理解されているはず。
僕はそんな卑近な話ではないと思う。
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男系継承は、何度も繰り返されてきた
そもそも男系男子で皇統をつないでいくというのは、これまでの日本の歴史で何度も繰り返されてきたことだ。
天皇家は公式には二千六百年続くとされるが、さすがにそれは神話の領域で、学者の多くは実際には千五百年ほど、継体天皇のあたりからと見ている。
僕も同感だ。
その継体天皇にしても、応神天皇の五世の孫という、ずいぶん遠い血筋から迎えられた方だ。
江戸時代の光格天皇も同じで、傍系から引かれてきた。
いまの天皇陛下は、その光格天皇の血に連なっておられる。
だから今回の改正は、過去に何度も踏んできた道を、もう一度なぞるだけのこと、とも言える。
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女性天皇と女系天皇は、まるで違う
ここで一つ、区別しておきたいことがある。
女性天皇と女系天皇は、まったく別の話だ。
女性天皇は、父方をたどれば皇統につながる女性の天皇のことで、歴史上に何人もおられた。
一方の女系天皇は、母方だけが皇統につながる天皇を指す。
こちらは、一度も存在していない。ここが決定的に違う。
この二つを混同したまま議論している人が結構多い。
なぜ女系がここまで慎重に扱われるのか、そこにどんな政治的な重みがあるのか、というところまで踏まえている人となると、さらに少ないように思う。
ただ、それを責める気にもならない。
それだけいまの天皇家が、政治から遠い、静かな存在になっているということなのだと思う。
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天皇が政治の中心だった時期は、ほとんどない
僕は、いまの天皇家というのは明治天皇から始まっていると感じている。
不敬に聞こえたら申し訳ない。
明治天皇の一代前が孝明天皇で、明治維新に関わっておられた。
ではその前は、と問われて名前が出てくる人は少ないだろう。
僕も出てこない。
考えてみれば、天皇が政治の中心にいた時期は、日本の歴史のなかでほとんどない。
江戸時代の将軍の名前ならすらすら出てくる人でも、そのころの天皇の名を挙げられる人は、まずいないだろう。
室町のころにはもう実権から遠く、足利義昭などは織田信長に粗末に扱われ、鞆の浦のあたりまで逃げている。
後醍醐天皇が一瞬だけ天皇親政を成し遂げたが、長くは続かず、隠岐へ流された。
それ以前も、天皇より上皇が院政で実権を握っていた時期のほうが長い。
天皇が本当の意味で国のトップに立ったのは、大政奉還を経て明治天皇が全国を巡幸し、これからは自分が中心だと庶民に顔を見せて回った、あの時からだ。
明治天皇はとても若くして即位されたが、立派な方だったから、人々も「これからは将軍さんに代わって天皇さんがトップなのだ」と素直に受け止めた。
もっとも、権威はともかく権力まで一手に握っていたかというと、そこは別だと思う。
実際に国を動かしていたのは元老たちで、天皇はどこか、権威そのものとして歴史の舞台に立たされていた。
それでもその舞台に立ったこと自体が、それまでとはまるで違う出来事だった。
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それでも、僕はその糸を切れない
昭和天皇は戦争の時代に祭り上げられ、戦争責任という重い言葉を、いまも背負わされている。
その空気を変えたのが、平成の、今の上皇さまだ。
国民に寄り添うことを徹底され、そこから現在の深い敬意が育っていった。
僕は昭和を生きた人間だから、昭和天皇の時代のこともよく覚えている。
当時これほどの敬意が集まっていたかというと、そうではなかった。
戦争責任を強い言葉で問う人も、まだ周りにたくさんいた。
いま多くの国民が今上陛下に払っている敬意は、上皇さまがひとつずつ積み上げてこられたものの上に立っていると感じている。
だから国民が「いまの天皇家の血筋であれば、女性でも女系でも構わない」と感じるのは、自分の生きた実感からすれば、もっともだと思う。
僕自身、普通の国民として、その気持ちはよくわかる。
ただ、政治家は違う。
彼らは自分の実感だけでなく、歴史の時間軸で考えなければならない。
いま男系を断ち切ってしまえば、五十年後はもつかもしれない。
百年後も、なんとかなるかもしれない。
けれど三百年後、五百年後に「なぜあの時こんな途方もないことをしたのか」と、その汚名を子孫まで背負わされる可能性がある。
千五百年続いたものを、自分の代で切る。
その判断を、僕ならできるだろうか。
できない。
過去にこの国を切り盛りしてきた人たちも、できなかったことだ。
逆に、何もせずいずれ断絶に向かうほうが、まだ引き受けられる気がしてしまう。
少なくとも千五百年、神話まで含めれば二千六百年、途切れさせずにきた。
それを次の代へ渡していくのが、現在の政治家の仕事ではないか。
もちろん、これに正解はない。
女性・女系へ舵を切ることが百パーセント正しいと腹をくくれるなら、その道もあるのだろう。
でも僕には、その覚悟は持てない。
日本の歴史に大罪人として名を残す、それだけの信念が要る。
反対の立場に立って考えてみること。
それは、こういう問題ではとても大切だと思う。
皆さんは、どう考えるだろうか。