#ショートSTORY
#【リプリー症候群】Chapter2
#朗読
私は真弓になって
コンクールに出た
大きなホールの中央に黒光した
グランドピアノが置いてある
両脇にはオーケストラも控える
本格的なピアノコンクールだ
会場に入った途端に私は身震いがした
夢にまで見たコンサート
真弓に借りたドレスを着て
楽屋で順番を待った
「マユミ・タチバナ」
紹介を受けて私はピアノの椅子に座った
演奏を始めると 私は自分の世界に入り込んだ 楽しくて でも この曲の持つ
どこか寂しげな音を私は奏でた
曲が終わる
会場の観客が拍手をしながら
立ち上がって 中には「ブラボー」と声に出す者もいた
私は頭を下げて
楽屋に戻ってホッとしていると
廊下が賑やかだった
沢山のライターが 私の楽屋の前に居た
関係者から 取材のオーファーが来ている事を知らせてられて
私は ブラッシュの点滅と
いつからピアノを弾いていたのか?
など 取材の攻撃を受けた
日本語では無かったが
幼い頃から こんな場面をイメージして
有名ならピアニストのコメントを聞いていたので ほとんどの質問には
答えられた
翌日から私は有名人になった
あちこちからのオファーは
私が眠る事さえ許さない
だが私は幸せだった
雑誌の掲載を見て
真弓から連絡が来たのは三週間も経ってからだ
「どーゆー事?なんで貴方が 橘 真弓になってるの?」
真弓の声は怒りに震えていた
私は落ち着いた声で真弓に言った
「貴方がお願いしたんでしょ?
橘 真弓になってコンクールに出て下さいと…
私はこれから死ぬまで
橘 真弓として生きていく」
真弓は気が狂ったような叫び声で
「そんな事 出来るわけが無い」と
大声を出した
私は 感じていた
幼い頃から私は 真弓が声に出しているような 怒りを飲み込んで生きて来た
苦しかった貧しいだけで誰からも
一度も聴いてもらえなかった私のピアノの演奏…
リプリー症候群…