創作叙事詩「川に並び進み、生きめぐるあなたとわたし」のよみききと解題(23分)『よみききの世界』2024.7.23
川に並び進み、生きめぐるあなたとわたし
寺澤 満春/成田 喜一郎
川上にいるひとが重き荷を背負っておられれば
みずから川上に向かいゆき
その重き荷をわかちもつか そのそばに並び進めるか
川上にいるひとにうれしたのしきことあれば
みずから川上に向かいゆき
言祝ぐことばをかけるか そのそばに並び進めるか
川上のひとたちが恙なきときも
常に川上のひとたちに想いを馳せ
さらに恙なきことを祈れるか
川下にいるあなたとわたし 川上から流れくる
水の清きも濁りも
そのすべてを受け止められるか
川下にいるあなたとわたし 川上から流れくる
水のすべてに誘われて
川上のひとたちとともに並び進めるか
古代中国のとある方が
こんなことを言ったらしい
*
最も善きことは 水のようなものではないのかな
水はあらゆるものに恵みを与え 時に暴れ襲うこともあるが
水はひとの嫌う低き場所で いつも満足しておられるのではないのかな
このように 水は道/みち、そこを流れるタオ/Taoみたいなもんじゃないのかな
水は住むために 地味なところを好むようだね
水はものごとを考えるとき 奥深さを好むようだよ
友との交わりには 心のやさしさを好むようだね
ことばには 誠実さをこめることを好むようだよ
政/祭りごとには ゆるやかな秩序を好むようだね
仕事においては その方の持ち味を引き出すことを好むようだよ
行動においては ならでは時を好むようだね
このように 水は争わないから まちがいは多くないらしい(注)
*
今 川下にいるあなたとわたしは
常日頃のケア careを怠らず
そして 責任 chargeを果たし
必要に応じて 指差し導き direction
監督 supervisionする
いつも
川上のひとたちと並び進む運営 administration
経営 management を感じ 考えている
時に嵐が吹き荒れるとき 川の氾濫を避けるため
心ならずも統制 control せねばならないことも覚悟している
川下にいるあなたとわたし、
仕事の後先 順序をまちがえず
常日頃 careに始まり careに終わることを
そして 来るか来ぬか非常時以外は
川上のひとたちと並び進む運営 administration
経営 management をめざしている
さて、川上にだれがいる
小さいひとか 元小さいひとか、
はたまた その狭間におられるグラデーションの小さなひとか
そう 川下にあなたとわたしがいて
小さいひとやグラデーションの小さなひとは常に川上にいて
元小さいひとやグラデーションの小さなひとは川下にいるはず
世の中にトップと言われるひとたちは
実は川下にいなければならないひとたちだ
トップにあぐらをかいて
トップダウンだ ボトムアップだなんて
ギロンは超えてゆこ
おのずと川は上から下へ流れるものじゃないの
世の中のボトムにいると思っているひとたちは
実は川上にいることに気づきたい
ボトムにあぐらをかいて
ボトムアップだ トップダウンだなんて
ギロンは超えてゆこ
おのずと川は上から下へ流れるものだから
そして 川の流れにそ〜っと身をまかせると
トップにいる自分も ボトムにいる自分も
いつしか
川と並び進み、生きめぐるひとに見えてくるものじゃないかしら
(2024.7.22作)
2004年に作った「川下にいる者」(寺澤 満春)が20年ぶりに改訂新版「川に並び進み、生きめぐるあなたとわたし」に書/描いた。
note『よみきき文化想造への道』に「「川下にいる者」から「川に並び進み、生きめぐるあなたとわたし」へ、改訂新版を書いたのは?」(2024.7.22)をアップした。
https://note.com/narisen2017/n/nb05f73647acd
*写真は、張 鍾元 著 上野浩道訳(1987)『老子の思想:タオ・新しい思惟への道』講談社学術文庫書影の一部です。