天つ風 雲の通ひ路 吹き閉ぢよ をとめの姿
しばしとどめむ
意味)天を吹く風よ 天女たちが帰っていく雲の中の通り道を吹き閉ざしてくれ。乙女たちの舞姿をもうしばらく地上にとどめておきたいのだ。
「天つ風」は、空高く天を吹く風のこと。
「雲の通ひ路」とは、雲の中にある天上と地上を結んで居る通路のことで、天女が、そこを通って天と地を行き来すると考えられていました。
陰暦11月(今で言う12月頃)に行われる新嘗祭(にいなめさい)で舞う4〜5人の未婚の女性で、貴族や国司の娘が選ばれました。新嘗祭とは、稲の収穫を祝い、翌年の豊作を祈願する、宮中最大の儀式です。
地上のその舞姫の姿を天女に見立てて詠んでいるんですね。この歌は、作者が35歳で出家する以前に詠まれているんですね。
作者の僧正遍照は、平安時代前期の僧で、歌人。
54代仁明天皇に仕えるエリートでしたが、天皇が亡くなり出家。比叡山に入り、後に僧正と言う高い位につきました。出家する前は、深草少将と呼ばれ、小野小町に恋する男として、『大和物語』にも
登場しています。小野小町とは、歌を送り合う仲だったそうです。