【結論】
関係フレームづけでは
自分と他者の身体的属性の差異や比較を行い,自己記述をする。差異や比較の関係づけは, 様々な側面でより多様な自己認識の発達と私と他者の視点の違いへの認識を促進する。
1.恣意的に適用可能な関係反応(Arbitrarily Applicable Relational Responding, AARR;Hayes et al. 2001a)
・RFTの基礎的な考え方…人間の言語と認知を文脈的,機能的, 行動的に捉え,複数の刺激を特定の関係フレーム(等位,反対)で関係づける
・人間の言語と認知を構成する基本的な現象の多くは,恣意的に適用可能な関係反応の能力を基に発展する
・人間の言語能力は物理的特性間の類似性や形態をこえて関係づけることが可能で、言語習得や認知の学習と大きく関わっている(Dymond & Barnes-Holmes 1994)。
2.恣意的に適用可能な関係反応の種類
1)相互的な内包…AがBより「大きい」ならば BがAより「小さい」というように、刺激Aから刺激Bへの関係が確立されていると、刺激Bから刺激Aへの関係が成立する。
例)10円が1000円よりも重いなら1000円は10円より軽い
2)複合的相互的内包…「A = B」かつ「A = C」ならば「B = C」かつ「C = B」のように、刺激Aと刺激Bと等位の関係,刺激 Aと刺激Cで等位の関係が確立されている場合, 刺激Bが刺激Cの等位の関係が成立する
例)10円が100円より価値が低いなら、100円は10円より価値が高い。100円が1000円より価値が低いなら、10円も1000円より価値が低い
3)刺激機能の転換…刺激Aが刺激Bと等位の関係にあり,刺激Aが嫌悪的機能をもつならば,刺激Aと等位の関係にある刺激Bも嫌悪的機能をもつようになる。このように刺激間の関係が確立している場合,特定の刺激が持つ機能が関係ネットワークに存在する複数の刺激に転換する
例)AちゃんとBちゃんは仲良し。私はAちゃんが嫌いなので、Bちゃんも嫌い。
【刺激間の関係づけと刺激の機能転換】
RFTでは人間の言語と認知を関係フレーム反応として捉える。
① 刺激間の関係づけ(Crel)
② 刺激間の関係に基づく刺激の機能が転換される(Cfunc)
例)「彼は私よりも頭がいい」
「よりも」…比較の関係(Crel)
「頭がいい」…機能転換(Cfunc)
3.RFTによる自己概念
人は言語を使って自己を形成する
① 自己(I)と他者(you, he, she)を区別した自己記述の学習
② 等位や差異,比較などの関係フレームを使う
③ 自己に関する複雑な関係ネットワークが構成される
こうして色々な自分ができあがっていく
4.関係フレームづけと発達
「等位」…最初に習得される関係フレームづけで、他の関係づけ反応の基礎と考えられている。英語では,「is」「is the same as」,日本語では,「私は(が)~である」
反対「私は男であり女とは反対のものである」(差異)「私はAであり,AとBは違う」(比較),「私は~より」)
↓
良し悪し・道徳教育などで別のネットワークと関係づけられる。
社会的コミュニティーのメンバーによる強化によって、より複雑な関係ネットワークの中に自己を置く
【参考文献】
張・谷(2023)自己概念に対する関係フレーム理論からの理解と研究の展望,立命館人間科学研究 第46号
【ベストコメント】
心理学は、社会的な関係性と反応について、言葉の意味を確認しつつ文法立てているもの、ということをよく感じられるお話でした。
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