1.応用科学(Applied science)
・臨床場面における介入方法の有効性などを実証することを目的とする研究
・「どの方法がどのような結果を出すか (What procedures produce what outcomes)という『what』の問題に答えること
【ミドルレベルターム】
・ACTの『三つのセルフ』やルール支配行動の説明
・人間の現象を理論的に説明する
・応用科学の研究や臨床場面でより効果的に使用されることを目的とした説明
・実験室で機能的プロセスを明確にするという基礎科学の研究で使用されることを目的した説明ではない(Harte & Barnes-Holmes 2021b)。
「ミドルレベルタームは,基礎研究から直接生成されていないため, 理論的で非技術的な用語である」Zettle et al.(2016:367)
2.基礎科学(Basic science)
・機能的プロセスを明確にするための研究
・機能的プロセスとは…方法と結果の因果関係を明確にし,その変化過程を明らかにすること‐「なぜこの方法がこの結果を出したかという『why』に答えること」(Zettle et al. 2016)
【テクニカルターム(Barnes Holmes et al. 2020)】
・特定の現象やプロセスを説明するために使われる専門的な用語
・言語的自己の機能的プロセスを明確にすることを目的とした実験で観察可能
・CBSの三つの基準である,精度,範囲,深さに基づき,実験室で操作,分析可能な用語(Zettle et al. 2016:367)。
【精度】…行動を予測して影響を与えるために使用される概念によって参照される事象が,明確に相互に関連している度合い。概念が正確である場合,特定の現象を非常に限られた数の方法で(節約的に)説明できる
【範囲】…分析が幅広い現象に関連していること。
例)強化の概念は,非常に広範囲の動物の行動(人間を含めて)の変化を説明する。
【深さ】…分析が他のレベルの分析で確立された有用な説明と一致していること
例)強化の原則は,脳の機能に関する発見と矛盾してはならない
言語を含む人間言動の機能プロセスを探究するには,上記の三つの基準に基づいた分析が重要(Zettle et al. 2016: 386 391)。
3.これからの文脈的行動科学の方向性
※文脈的応用科学(CBS)…人間の行動や心理を理解するために、文脈(状況や環境)に注目する学問。人間がどんな状況でどのように行動するかを研究し、それに基づいて効果的な方法を見つけることを目指す
「CBSの研究領域には,応用科学(ACT)の研究ばかりでなく基礎理論(RFT)の理論的発展も重要,そして異なる目的を持つACTのミドルレベルタームによる説明と RFTのテクニカルタームによる説明を混同しないこと!ミドルレベルタームの説明をRFTで解釈するという方法では機能のプロセスを特定することが困難だ」Zettle et al.(2016)
基礎理論に基づく新理論
・Multi-Dimensional Multi-Level framework(MDML)…関係フレーム反応のCrelまたは関係づけという文脈手かがりを5水準と4次元で説明したモデル。
・Relating,Orienting,Evoking(ROE)…MDMLでは説明されていない言語刺激の機能(Cfunc)という文脈手かがりの影響を説明したモデル
【参考文献】
張・谷(2023)自己概念に対する関係フレーム理論からの理解と研究の展望,立命館人間科学研究 第46号
【ベストコメント】
一つの言葉に含まれる意味を追求する意味では、詩も同じように思うけれど、文学になると期待する効果は、陶酔的なもので、今日の行動科学になると、アンチ陶酔で、ひたすら現実的に、冷めた視点で言葉を考えるのだな、と思いました。
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