法橋ひらく
「それはとても速くて永い」
開かれたままの図鑑の重たさよ虹のなりたち詳細すぎる
途中から夢とわかって視ていたよ郵便ポスト打つ雨粒を
よく晴れてなんにもない日むりにでも出かけなければもう角砂糖
灯に群れる蛾は焦げながら、でも、だけど、世界に俺を全部与える
鉄塔の影おだやかに倒れゆきここから誰も喋らなくなる
先生にどうぞよろしく濡れている郵便ポスト触れれば冷えて
詞書)無茶言うな
「次は深大寺入口。健康のために一日一食、お蕎麦を食べましょう」
少年の睫毛硬くてたぶん君はこれからひどくモテるだろうね
背の高いひとに生まれてみたかった西日のなかに消え残るから
海鳴りをこんなに聴いて育つからここのキャベツは不眠に効くね
おやすみ こんなん綺麗事やけどみんな幸せやったらええな
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白昼の月はいよいよ消えかかり泣くほど好きな人がいますか
友情に変われば壊れないだろう冬のスモッグ煙れよもっと
水だけで育つ球根アクリルに根をつたわせて生々しいな
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あかいもの花のかたちに抜いているおんなのひとをよろこばせたい
村上きわみ『とてもしずかな心臓ふたつ』