歌集『短歌になりたい』
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ブランコでどちらからともなく君が代を歌った だんだんと真剣に
それなのに。海の時代の約束で珊瑚の色の唇なのに
上から見ないとわからないならハート形なんて意味ないこんな湖
友達とうまく話せた日の夜に一本道でみたお月さま
海で遊んだ記憶のように死ぬことが懐かしくなるかがやきながら
後戻りできないように無理をしてきたのに ちょうちょ型水溜まり
小さいチョコ良いと思って撮ってみる みんな何してるんだろう
そのことで泣くのも楽しかったってお菓子の箱を見ながら思う
ローソンだ近くに行って見てみよう 雨の横断歩道を渡る
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カフェオレを服にこぼしたそのことが雨の火曜にちょうどよかった
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シャツにワインをこぼした夏のずっとあと シャツにワインをこぼしたくなる
永井祐『広い世界と2や8や7』
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外は雨いま日高屋の中にいてしょうが焼き定食あったかい
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大外刈を決めたる後にさびしからむ人は畳に人を倒して
/永井陽子『ふしぎな楽器』
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東京をおまえの記憶そっくりにつくり直してわれわれが住む
我妻俊樹『足の踏み場、象の墓場』