おまへはおれを愛してる、一度とて
おれを憎んだためしはない。
おれもおまへを愛してる。前世から
さだまつていることのやう。
そして二人の魂は、不識に温和に愛し合ふ
もう長年の習慣だ。
それなのにまた二人には、
ひどく浮気な心があつて、
いちばん自然な愛の気持を、
時にうるさく思ふのだ。
佳い香水のかをりより、
病院の、あはい匂ひに慕ひよる。
そこでいちばん親しい二人が、
時にいちばん憎みあふ。
そしてあとでは得態の知れない
悔の気持に浸るのだ。
あゝ、二人には浮気があつて、
それが真実を見えなくしちまふ。
佳い香水のかをりより、
病院の、あはい匂ひに慕ひよる。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
中原中也
詩集『在りし日の歌』より
━━━━━━━━━━━━━━━━━
ほぼ毎週日曜日clusterでイベント開催
━━━━━━━━━━━━━━━━━
┌中原中也作品の英訳をはじめました
◆月夜鴉の個人サイト
https://tsukiyonokarasu.com/
┌あまりマメな方ではないので、投稿は気まぐれです
◆月夜鴉のX(Twitter)
https://x.com/tsukiyo__karasu
┌もうちょっと頑張ります^^;
◆月夜鴉のYoutube
https://www.youtube.com/@tsukiyonokarasu