水ヒアシンス
月しろか、いな、さにあらじ。
薄ら日か、いな、さにあらじ。
あはれ、その仄のにほひの
などもさはいまも身に沁む。
さなり、そは薄き香のゆめ。
ほのかなる暮の汀を、
われはまた君が背に寢て、
なにうたひ、なにかかたりし。
そも知らね、なべてをさなく
忘られし日にはあれども、
われは知る、二人溺れて
ふと見し、水ヒアシンスの花。
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泣きにしは
美はしき、そは兎まれ、人妻よ。
ほのかにも唇ふれて泣きにしは、
君ならじ、我ならじ、その一夜。
青みゆく蝋の火と月光と、
饐えてゆく無花果と、日のかげと、
瞬間にほのぼのとくちつけて
消えにしを、落ちにしを、その一夜。
さるになど光ある御空より
君はまた香を求め泣き給ふ。
あな、あはれ、その一夜、泣きにしは
君ならじ、そのかみのわが少女。
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