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快食ボイス753・値段を書かない店は、なぜ損をしているのか

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はじめに 最近、飲食店において「値段を表記しない」ケースが増えてきているように感じる。 とくに顕著なのが、公式SNSとして使われることの多いInstagramだ。 料理の写真は並んでいるが、肝心の価格が書かれていない。 コメントで聞いてもスルー、あるいは「店頭でご確認ください」とだけ書かれていることもある。 この現象について、僕なりに整理してみたい。 --- 値段がわからないという不安 率直に言って、値段がわからない店は入りづらい。 料理の写真よりも、むしろ価格のほうが気になるという人は多いはずだ。 1,000円なのか、3,000円なのか。 それがわからない状態で入店するのは、心理的なハードルが高い。 僕はかなりの数の飲食店を回ってきた人間だが、それでも「事前に価格は知りたい」と思う。 店頭にも表示がなく、入店して席について初めて値段がわかる──こうした設計は、一般的な顧客行動から見て不親切と言わざるを得ない。 --- 情報は必ず「漏れる」 仮に店側が意図的に価格を出していないとしても、その情報は必ず外に出る。 来店した客が写真を撮り、SNSに投稿するからだ。 しかし問題は、その情報が「非公式」であることだ。 税込・税抜の違いや誤記など、情報のブレが発生する可能性がある。 もし誤った価格が広まった場合、それを修正するのは店側にとっても手間だ。 だったら最初から、公式情報として明示しておいたほうが合理的である。 「隠す」ことによるメリットはほとんどなく、「開示しないことによるリスク」だけが蓄積していく。 --- 価格は、料理の一部である 飲食店において、価格は単なる数字ではない。 それは「料理の設計思想」そのものだ。 たとえば、同じ麻婆豆腐でも、単品2000円・定食1200円という構成があったとする。 この時点で「なぜ単品が高いのか?」という問いが生まれる。 そこにこそ、店の意図や個性が現れる。 料理名に少し補足が加わっていれば、なおさらだ。 「単品の方は普通の麻婆豆腐ではない」というメッセージが伝わってくる。 つまり、価格は情報であり、コミュニケーションなのだ。 --- メニューは“読むもの”である 僕は店に行ったあと、品書きの写真を見返すことがよくある。 その場では気づかなかった構造や意図が、後から浮かび上がってくることが多いからだ。 どれが主力商品なのか、どの価格帯で利益を取っているのか、どういう組み立てになっているのか──メニューには膨大な情報が詰まっている。 だからこそ、本来は「入店前」にある程度それを読み取れる状態が望ましい。 店頭に看板メニューが掲示されていれば、「この店ではこれを食べるべきだな」と判断できる。 しかしそれがない場合、手探りで注文することになり、結果的に最適な体験を逃す可能性もある。 --- シグネチャーが伝わらない店の弱さ 飲食店において重要なのは、「この店といえばこれ」というシグネチャーディッシュだ。 ただ「美味しい」だけでは、他店との差別化にはならない。 麻婆豆腐が美味しい店は無数にあるからだ。 重要なのは、 - 何がどう違うのか - なぜその料理なのか - どこにオリジナリティがあるのか こうした要素である。 そして、それらはメニューや価格設計によって伝えることができる。 にもかかわらず、その情報を出さないのは、自ら表現の機会を放棄しているようなものだ。 --- 履歴書のない採用面接 いわば「履歴書なしで採用してください」と言っているようなものだ。 名前と顔だけ見て判断してくれ、という状態である。 もちろん、それでも成立するケースはあるだろう。 しかし一般的には、判断材料が少なすぎる。 外食も同じだ。 その一食を「成功させたい」と思っている人ほど、リスクは避ける。 結果として、「情報が少ない店」は選ばれにくくなる。 --- おわりに 価格やメニューは、隠すものではなく、伝えるべきものである。 どうせ最終的には支払ってもらうのだから、どこかで開示する必要がある。 そのタイミングを後ろにずらす理由は乏しい。 むしろ、 - 客に安心感を与える - 店の思想を伝える - 誤情報の拡散を防ぐ こうした観点からも、積極的に開示するのが合理的だ。 飲食店にとって、価格は単なる数字ではない。 それは「店そのもの」を語る言語なのだから。
3月21日
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