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快食ボイス765・バーの透明な氷には理由がある──氷とコスパの話

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暑くなってくると、氷の消費量が増える。 家の冷蔵庫で作る氷でも、もちろん用途によっては十分だ。 大量に使いたいとき、茹でた野菜などの温度を下げたいときは、何も問題ない。 ただ、僕の場合はほぼ「飲み物に入れるだけ」なので、ここ数年は市販の氷を買ってきて使っている。 そして買う氷を変えてから、飲み物の味が明らかに変わった。 --- 氷の良し悪しを決める、たった2つの要件 氷に求められる条件は、突き詰めると2つだ。 ひとつは溶けにくさ。 溶けにくければ飲み物が水っぽくなりにくく、最後まで味が崩れない。 もうひとつは、溶けたときの水そのものがおいしいこと。 完全に溶けない氷は存在しないから、溶けた水がまずければ、それがそのまま飲み物の味に混じってくる。 たとえばハイボールを例に取ると、ウイスキーの品質はもちろん大事だが、それを生かすも殺すも、炭酸水と氷次第だということになる。 僕は炭酸水をソーダストリームで自作していて(ブリタの浄水を通した水道水を使っている)、氷もちゃんとしたものを選ぶようにしている。 そこまでやると、ハイボールの味が本当に変わる。 --- 「純氷」という世界を知ったきっかけ よく行くイズミ系列の店に大村製氷(長崎県)の「純氷」という商品が置かれていた。 特に深く考えず使っていたが、あるとき「この氷、なんでこんなに旨いんだ?」と気になって調べてみた。 そこで知ったのが、アイス缶製造方式という製法だ。 大きなアイス缶(容量130キロほど)に水を入れ、2〜3日かけてゆっくり凍らせる。 氷が凍る過程では不純物が外側に押し出される性質があるため、24時間ごとに不純物の集まった部分を取り除き、また水を足して……という作業を繰り返す。 手間がかかる、昔ながらの職人的な製法だ。 氷の世界では、この製法で作られたものを純氷と呼ぶらしい。 ターボ製氷方式やセル製氷方式など、より効率的でコストを下げやすい製法もあるが、味という点では純氷が一枚上手だという。 大村製氷はさらに、山中の湧き水を原料に使っているため、現在の水そのものが旨い。 「山の上の氷屋さん」が自らのブランドになっている。 --- 棚から消えた氷を追いかけて その大村製氷の氷が、ある日を境にイズミの棚から姿を消した。 本当に困る出来事だったので、大村製氷に直接問い合わせてみた。 すると、社長の村山さんご本人から返信をいただいた。 イズミ向けには引き続きプライベートブランドの一部を製造しているとのことだったが、プライベートブランドとは複数のメーカーが共通パッケージで供給するものなので、大村製氷の氷かどうかがわからなくなる。 実際、棚の氷はプライベートブランドっぽいものに切り替わっていた。 そこで改めて聞いてみると、広島市内のAプライス(業務用スーパー)に「山の上の氷屋さん」ブランドで販売しているとのことだった。 広島市内には中広町と八丁堀に店舗があり、中広店には駐車場もある。 これは助かった。 --- バーが透明な氷を使う本当の理由 オーセンティックなバーでは、透明で美しい氷が使われている。 あれは「見た目のため」「高級感の演出」だと思われがちだが、実際にはちゃんと機能上の理由がある。 溶けにくく、なおかつ溶けた水もおいしい——この2条件を満たす氷でなければ、せっかくの酒の味が台無しになるからだ。 バーテンダーがいい氷にこだわるのは、お客に高い代金を払わせるためではなく、お酒の味を最大限に引き上げ、かつ損なわないためだ。 --- 氷への投資は、最高のコスパかもしれない 大村製氷の氷とそれ以外の氷の価格差は、おそらく100円にも満たない。 それだけの差で、夏の間の冷たい飲み物の味が別物になるとしたら——これはコストパフォーマンスという言葉が本来意味するものそのものではないか。 「コスパがいい=安い」ではない。 コストに対してパフォーマンスが高い、というのが本来の意味だ。 優良な飲食店においては、一番高い料理が一番コスパがいいケースがほとんどだ(この話はまた別の機会に)。 氷にかけるわずかな上乗せは、間違いなく夏の幸せ度を向上させる。 ぜひ試してみてほしい。
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