プロフェッショナル仕事の流儀で「はまんど」が出た
NHKの見逃し配信でプロフェッショナル仕事の流儀を見た。
まさか「はまんど」が出るとは思っていなかったので、番組表で見たときには目を疑った。
香川県のラーメン店で、僕が何度も足を運んだ店だ。
放送は既に終わっているが、見逃し配信が5月23日(土)の10時44分まで公開されているので、ぜひ見てほしい。
ラーメン好きはもちろん、うどん好きにも強くすすめたい。
それくらいの内容だった。
https://www.web.nhk/tv/an/professional/pl/series-tep-8X88ZVMGV5/ep/RMK677G72Z
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讃岐うどんブームが始まる前から、香川に通っていた
「はまんど」の話をする前に、香川との関わりを少し書かせてほしい。
讃岐うどんには20代後半からハマっていた。
ブームになる前だ。
きっかけは「タウン情報香川」という地域情報誌が出した「恐るべき讃岐うどん」という本で、讃岐うどんの面白さを掘り下げた内容だった。
これが全国的に話題になって讃岐うどんブームの火付け役になっていくのだが、僕は香川県でしか手に入らない時期からこの本を取り寄せて、食べ歩きに行った。
最初に行った頃は「山越」も行列などなかった。
広島からわざわざうどんを食べに来たと言えば、地元の人に「なんでそんなところから?」と驚かれるくらいの時代だ。
その後は現在に至るまでの大ブームになった。
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香川でラーメンをやると決めた理由
森さんという人は、ずっとラーメンをやり続けてきた人だ。
香川県でラーメンをやるというのは、相当な覚悟がいる。
競合相手は讃岐うどんだ。あの圧倒的な食文化の蓄積を前にして、ラーメンで勝負しようというのだから、普通の人間ではない。
ではどうしたか。
森さんは「香川でラーメンをやるなら、まず香川のうどんを知らなくてはいけない」という結論を出した。
そして実際に香川中のうどんを食べ歩いた。
ライバルを研究するというより、この土地の食の核心を自分の体で知ろうとした、ということだと思う。
これがぶっ飛んでいる。
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伊吹イリコ一本で勝負する
香川のうどんのだしは、ほぼ煮干し(イリコ)と昆布だ。
森さんはそのことをよくわかった上で、ラーメンのスープを伊吹イリコ一本で作っている。
伊吹島という香川の離島で揚げられる煮干しで、日本のイリコのトップブランドのひとつと言っていい。
ラーメンのスープに使えるのは最高級品ではなく、ランクが少し下がるものだ。
ピカピカに輝く最高級の銀色の煮干しは料亭向けで、脂がのっていないものがベスト。
それを惜しみなく使えばいいというわけでもないのがまた難しいのだが、それでも伊吹イリコにこだわり続けている。
うどんのだしとほぼ同じ素材で、ラーメンのスープを作っているということになる。
なんでそんな難しいことをするんだ、と思わなくもないが、それこそが香川でラーメンをやる意味だということなのだろう。
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昔は怖い人だったが、今は違う
番組を見ていると、森さんの若い頃の話も出てくる。
ものすごくストイックな人で、当時は近づきがたいような雰囲気があったし、僕もそれは覚えている。
味への妥協を許さないタイプが、そのまま人に対しても厳しく出ていたということだろう。
それが現在68歳になって、変わっていた。
一番大事なことはおいしい料理を出すことだが、それ以前に「気持ちのいい食空間を作ること」だ、というのが今の森さんの答えだ。
お客さんが入ってきたら気持ちよく声をかける。
帰るときにしっかり挨拶する。
笑顔で料理を提供する。
そういう当たり前のことが、味や見た目よりも手前の、前提として存在している。
番組の中でお客さんがみんな楽しそうに食べているのが印象的だった。
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味半分、見た目半分。でもそれは正解じゃない。
森さんが到達した言葉がある。「味半分、見た目半分」だ。
料理の美味しさは味だけでは決まらない。
見た目が半分を占める。
これ自体はわかる話だが、番組を通して見ていると、その言葉の後ろに「当たり前にやっておかなくちゃいけないことが山ほどある」ということが透けて見えてくる。
森さんにとって「味と見た目」の話は、もっと手前のことが全部できていて初めて語れる次元の話なのだ。
これはラーメンという食べ物を通じて、彼が一生かけて出した答えだ。
ただし、正解ではない。
最近、みんな正解を求めすぎると僕は思っている。
万人に対する正解というものは存在しない。
人によって、その時々によって、答えは違う。
森さんがたどり着いたのも「正解」ではなく、森さんの「答え」だ。
だから美しい。
人生というのは、そういうものにしかなり得ない。
ラーメンを通じて人生まで見せてくれる番組だった。
配信は残り1週間弱しかない。
ラーメン好きもうどん好きも、ぜひ。