「あの食べ方の意味がわからない」はよくわかる
スレッズで見かけた話だ。
ラーメンは好きだが、つけ麺の良さがわからない、という人がいた。
温かいスープに、冷水で締めた麺をくぐらせて食べる。
あの意味がわからない、と。
つけ麺あるあるではあるが、実際そう感じている人は結構多いんじゃないかと思う。
そしてその感覚は、僕もよくわかる。
わからないというつもりが全くない。
むしろ、その気持ちはよくわかるよ、と思う。
ただ、この楽しみ方というか、仕組みを理解すれば、ある程度楽しめるようになるかもしれない。
今日はそういう話をしてみたい。
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そば、うどんにも同じ仕組みがある
これはラーメンの世界だけの話ではない。
そばでもうどんでも、同じような仕組みがある。
一番わかりやすいのは鴨南蛮だ。
鴨せいろ、鴨つけそばとも呼ぶ。
鴨肉は脂身がついているので、ツユは必ず温かい。
もし冷たいツユにすると、鴨の脂身はカチカチに固まってしまう。
鴨の脂は融点が高いので、冷えるとロウみたいになって、全くおいしくない。
だから鴨を使うなら、ツユは温かくなる。
これが鶏ならまだ融通がきく。
ささみや胸肉なら、ぬるいくらいまでは許せる。
だが鴨はそうはいかない。
そこに浸すそばは、通常冷たいそばを使う。
ちなみに昔は温かいそばを浸して食べることもあった。
せいろそばのせいろとは、蒸すための調理器具だ。
元々せいろそばは、そばを蒸して、その温かいそばをツユに浸して食べていた。
今はモソモソするので廃れたが、出している店もある。
山口県萩市に、ものすごい老舗がある。
これがせいろそばか、と国宝の建物を見に行くような感覚で食べに行ったが、非常に面白かった。
うどんなら、讃岐の「ひやかけ」がそうだ。
冷たい麺に冷たいツユが「ひやひや」、熱い麺に熱いツユが「かけ」。
その間にあるのが冷やかけで、冷たい麺に温かいツユをかける。
かけた直後に食べれば、麺の芯はまだ冷たくコシが残り、ツユは温かい。
麺の食感は味わいたいが、冷や冷やは好きじゃない、という人が好む。
讃岐好きの中でも賛否が分かれる、限られた人の食べ方だ。
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つけ麺は、麺にフォーカスした料理だ
つけ麺にも熱盛りがある。温かい麺に温かいツユ。
ただ、つけ麺はラーメンからの派生なので、ツユに油脂がたっぷり使われている。
だからツユを冷たくすることはできない。
ちなみに広島つけ麺は全く別物だ。
植物性のラー油でコクを出し、辛さで補い、野菜をたくさん加える。
同じ「つけ麺」でも、そうめんとうどんくらい違う。
今話しているのは、大勝軒から始まった一般的なつけ麺。
冷たい麺に、チャーシューが入って油の浮いた温かいツユ、という形だ。
つけ麺という料理は、基本的に麺を味わうものだ。
ラーメンがどちらかと言えばスープ寄りの料理なのに対して、つけ麺は麺にフォーカスしている。
麺の比重がすごく高い。
そして、そば・うどん・中華麺、どんな麺でも、麺そのものを味わいたいなら冷たい方がおいしい。
これはどの麺でも同じだ。
温かくして熱盛りにすると、麺はほぐれにくく、くっついて、ブヨブヨしてくる。
こんなことならラーメンを食えばいい、となる。
麺が冷たいと、表面がつるりとして、コシがしっかりある。
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なぜ冷たい麺を温かいツユに入れるのか
ここが本質だ。
つけ麺のツユには油脂が浮いている。
この温かいツユに、ある程度太い冷たい麺を入れる。
すると麺の周囲でツユの温度が下がる。
油は温かいとサラサラだが、温度が下がると粘りが出る。
ゼラチンも同じだ。
ラーメンの一種だからツユにはゼラチン分もしっかりあって、これも冷えると粘って絡みやすくなる。
麺を持ち上げると、その周りに油脂やゼラチンがよくまとわりつく。
ただし冷えすぎると固まってしまうので、そこまでは下がらない。
温かいツユと冷たい麺が出会って、ぬるい状態になる。
このぬるさだからこそ、ツユそのものを麺が持ち上げる。
温かい麺に温かいツユだと、ツユが滑り落ちてしまう。
太い麺を味わうときに、麺へツユが乗らない。
だから冷たい麺なのだ。
ラーメンとは設計図が全く違う。
ラーメンのロジックで理解しようとすると理解できない。
つけ麺はつけ麺のロジックで理解しないといけない。
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ラーメンはまだ、発展途上の料理だ
正直に書くと、僕自身はつけ麺がそこまで好きというわけではない。
ラーメンに限らず、僕はあらゆる料理でスープ系が好きなのだ。
我ながら汁物が好きだと思う。
だからラーメンの方が魅力的に映る。
ただ、ラーメンはまだ発展途上の料理だ。
これからもっと発展していくと思うが、麺そのもののおいしさという点では、まだそば・うどんの域には達していない。
そば・うどんには、ざる、もり、せいろと、麺だけを味わう食べ方がある。
だがラーメンには、ざる中華麺のような食べ方がほとんどない。
出す店もたまにあるが、少ない。
原価的にも、圧倒的にスープ側にお金をかける構造になっている。
その力点を麺の方へ移そうとしているのが、つけ麺なのだ。
この延長線上に、ざるそばやざるうどんのような、ざる中華麺が出てくる布石になるのかもしれない。
ラーメン業界の人たちは皆ものすごく研究熱心だから、出てきても全くおかしくないと思う。
つけ麺もまだ、生まれて50年ほどの料理だ。
これからまだまだ発展の可能性があると考えている。