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快食ボイス807・グルメ情報を35年をやってきて、口のないAIには負けられない

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10年以上続く人はほとんどいない 広島の飲食シーン、グルメ情報発信の世界を、僕は35年近く見てきた。 だが、10年以上続いている人はほとんどいない。 個人ブログの時代、食べログの時代、Twitterの時代、そして今のInstagramを中心としたグルメインフルエンサーの時代。 プラットフォームが変わるたびに、顔ぶれが入れ替わってきた。 でもやっていることは、本質的にまったく変わっていない。 「この店はこういう店です」という場所の情報を打ち続けるだけだ。 これはグルメ情報に限らず、情報発信全般に共通する構造だと思っているが、飲食の世界ではそれが特に顕著だ。 なぜ続かないのか。 理由は単純で、場所の情報だけを発信していれば、それは誰かに代替される。 訪れた人なら誰でも同じ情報が得られるし、より多くの人が訪れれば訪れるほど情報は分散していく。 個人が場所の情報を蓄積する構造は、もともと弱い。 プラットフォームが変わるのは、言い換えれば主戦場が変わるだけだ。 個人ブログで積み上げた人が食べログに移り、そこで積み上げた人がInstagramに移る。 毎回リセットされて、毎回また場所の情報を打ち始める。 その繰り返しだ。 中身が変わっていないのだから、同じことが起き続けるのは当然だ。 --- AIがその仕組みを加速させている これをいま加速度的に進めているのがAIだ。 いまのAIにたとえば「広島でこういう雰囲気の店を教えて」と聞いても、トンチンカンな答えしか返ってこない。 使い物にならないが、AIが使われ始めてまだ3年経っていない。 その進化の速さを考えれば、3年から遅くとも5年以内に「広島グルメAI」的なものが実用レベルに達するだろうというのが僕の感覚だ。 その学習データはどこから来るか。 Googleマップであり、食べログであり、Instagramであり、個人ブログだ。 構造化されたデータが整っているGoogleマップや食べログは、AIが最も食べやすい形になっている。Googleがすでに口コミをAIで要約して出してきているのは当然で、Geminiを開発しているGoogleが自社サービスのデータをAIに食わせないわけがない。 これはGoogleに限らない。 プラットフォーマーはみな同じ方向に動いている。 個人ブログもnoteも同じだ。 丁寧に積み上げた情報は、プラットフォームの規約上、AI学習に使われることを許諾している。 情報を蓄積すればするほど、結果としてAIの学習データになっていく。 この快食ボイスも例外ではない。 ただ僕はそれでいい、むしろ食べてもらって構わないという感覚で話をしている。 Instagramは画像中心だからテキストとしては薄いが、メタが運営している以上、画像そのものがAI学習に使われている。 どこに積み上げても、同じことだ。 --- 代替されない部分はどこか ではAIに食われないものは何か。 それは自分なりの解釈と、それを支える知識の重ね合わせだ。 この店の料理を、食文化の文脈の中でどう位置づけるか。 この一皿に、どんな歴史や技術的背景が重なっているか。 体感として、その料理を受け取った経験から何が言えるか。 AIには体がない。 食べることができない。 そこだけは、今のところ代替できていない。 たとえば僕がある料理を食べて「これはあの時代のあの技法が変形したものだ」と気づくとき、その気づきの背景には、これまで食べてきたものや読んできたものや、料理人から聞いた話が全部重なっている。 それは僕の中にしかない情報だ。 AIはその情報をどこかから集めることはできても、その集め方は僕とは根本的に違う。 身体知の記憶と、テキストから抽出したデータは、同じ情報ではない。 税理士や公認会計士がAIに置き換えられると言われて久しいが、トップレベルの人間は残る。 法の趣旨や、税務調査のギリギリのラインの感覚、将来的な動向の読みは、AIには出せない。 イラストも音楽も同じ構造だ。 ボトムレベルの仕事はAIに食われる。 だが上位に入っている人間はしばらく大丈夫だろう。 グルメ情報の世界でも、まったく同じことが起きていると思う。 フリーランス向けのマッチングサービスが軒並みやられているのも、同じ理由だ。 代替できない仕事をやっているフリーランスは生き残る。 AIに代替されやすいものをやっていれば、やられる。 シンプルな話だが、自分が今どちら側にいるかを正確に把握することは結構難しい。 --- それでも戦い続ける フォロワーが増えているのに影響力が落ちている。 そういう状況が徐々に見えてきた。 フォロワー数は増え続けているが、実際の集客効果や店との関係性は薄まっていく。 AIがさらに賢くなれば、この傾向は一層進む。 情報を出せば出すほどAIの餌になる。 それは分かっている。 でも別に悲観しているわけではない。 あらゆる分野で同じことが起きているのだから、グルメ情報だけが特別に悲惨な話ではない。 問題は、その構造の中でどう立ち位置を取るかだ。 動画にするとか、速さで勝負するとか、そういうことも考えられる。 でも多分、それも全部AIにやられる。 突き詰めれば、AIに食べられない情報を出し続けるしかない。 AIには口がない。 おいしいものを食べて感じることができない。 長年、情報発信してきた人間として、口のない奴に負けるわけにはいかない。 勝てないかもしれないけれど、僕は戦い続けるつもりだ。
6月6日
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