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快食ボイス761・オーソレミオ・ディ・メイプルシティ閉店に思うこと

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はじめに 宮島口にあった「オーソレミオ・ディ・メイプルシティ」が、今日をもって閉店した。 1975年の創業から実に51年。 半世紀にわたって、広島県西部のイタリアンを牽引してきた老舗レストランがその幕を下ろした。 --- 宮島口の思い出 宮島口といえば、フェリーに乗る前後に立ち寄る場所として広島県民にはお馴染みの場所だ。 オーソレミオは、そのすぐそばにあった。 僕も何度も足を運んだ。 牡蠣を使った料理をはじめ、ここだからこそ食べられる味があった。 誕生日会や記念日、家族や仲間との集まり。きっと多くの人が、人生の記憶の一部としてあの店を持っているはずだ。 ただ、近年は足が遠のいていた。 宮島口は駐車場事情が厳しくなり、停めるだけで1,000円かかるようになっていたし、新しい店が次々にできる。 そうこうしているうちに、店がスープカレーの専門店に変わっていた。 「カレーじゃないだろう」とと思ったが「評判が良ければ行ってみようか」と考えていたところ、その前に閉店してしまった、というのが経緯だ。 --- メイプルシティグループとは何だったのか 少し調べてみたので、整理しておきたい。 株式会社メイプルシティのルーツは1975年創業の個人事業。 宮島口のオーソレミオが最古の店舗だ。 1987年には大竹に「シシリー・デ・メイプルシティ」をオープンしており、こちらが会社の本社所在地でもある。 その後も広島市内を中心に店舗を展開し、今では「ゾーナ・イタリア」グループとして10店舗以上を構えている。 「メイプルシティ」という名前は、もみじ(メイプル)から来ていると思われる。 広島を象徴する木であり、もみじまんじゅうにも通じるシンボリックな名前だ。 そういう名前を持つ会社が半世紀にわたって地元のイタリアンを守ってきたというのは、それだけで一つのナラティブである。 --- M&Aによって変わったもの 転機は2018年12月にある。 このとき、下関市に本社を置く愛グループ(日本セレモニーがメイン事業)という冠婚葬祭系の大手企業が、株式会社メイプルシティをM&Aによって傘下に収めた。 なぜ売却・統合という選択をしたのかはわからなかったが、1975年創業ということを考えると、創業者がかなりご高齢になられていた可能性が高い。 後継者問題、あるいは多店舗展開による資金的な課題があったのかもしれない。 M&A後の動きを見ると、大竹のシシリーデメイプルシティは2021年4月に「店舗改装のため一時休業」と発表され「リニューアルは同年秋頃」とアナウンスされたまま、事実上の閉店状態が続いている。 コロナの影響もあったかもしれないが、いずれにせよそのまま戻ってくることはなかった。 ちなみに、この大竹の店舗は株式会社メイプルシティの本社所在地でもある。 本社所在地をそのままにしておかざるを得ない事情があるのか、建物だけ残り続けている状況だ。 --- 「愛情」のない経営が奪ったもの 今の株式会社メイプルシティの社長は道濱さんという方で、古田にある「ゾーナ・イタリア」のシェフを務めている、との情報があった。 ただ、10店舗以上を抱える会社の社長が現役シェフを続けるというのは、現実的に考えると難しい話だ。 実態として、経営は愛グループが握っているのではないか、というのが僕の見立てだ。 そう考えると、宮島口の創業店舗をスープカレーに業態転換した判断も、腑に落ちる。 「この場所にどれだけの記憶と歴史が詰まっているか」を肌感覚で知っていれば、あの選択はできなかったはずだ。 どんな形であれ——高級化するにしても、リーズナブルにするにしても——イタリアンとして守り抜くことを選んだと思う。 事業ポートフォリオとして飲食を持つ企業にとっては、レストランはあくまで資産の一つ。 一方、その場所で長年料理を作り続けてきた人、食べ続けてきた人にとっては、記憶や感情と深く結びついた場所である。 そのギャップが、今回の閉店の背景にあるような気がしてならない。 --- 広島市のマリオが閉まるような衝撃 広島市で老舗イタリアンといえば、マリオグループを思い浮かべる人が多いだろう。 今回の件をマリオグループに置換すれば、平和記念公園前の「リストランテマリオ」が閉店するような衝撃に等しい。 もちろん、株式会社メイプルシティは今も存在しているし、現在ではメイプルシティ系列ではなく、ゾーナイタリア系列として広島市内で営業を続けている。 DNAが絶えたわけではない。 ただ、創業の地であり、最も記憶されるべき場所が消えてしまったことは残念でならない。 --- おわりに 跡地がどうなるのかは、これから注目していきたいと思っている。 「あの店でパスタ食べたよね」「あそこの牡蠣がおいしかった」——そういう記憶を持っている人が、広島県西部にはきっとたくさんいるはずだ。 51年間の感謝を申し上げたい。
3月31日
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