phase00 この町のこと
あるカフェの本棚から始まった
刻々と変わる地域の過去~未来の物語
憧れとは違う移住から4年になりますが、この町のことはまだ何も知らないんです。ただ仕事をこなし、朝を迎える毎日です。
散歩で買う缶コーヒーをよく飲んでいます。朝の日課です。缶コーヒーをテーブルに置き、Youtubeでボサノバを流し始めるとその日の仕事が始まります。
でも、今日はそのルーティンも長くは続きませんでした。フラッと立ち上がり、仕事場を出て、車のエンジンを掛け、町の小さなカフェへと向かったのです。
通る道は町の中心部でもある商店街。人の姿はほとんどなく、すれ違う車もほんの数台です。この通りで行われるお祭り事で見る人混みが絵空事のように感じます。
中心部からわずかに外れた目的のカフェに着きました。中をのぞき込むと奥座敷の古いテレビ画面に向かって座る男性の背中が見えます。小さなカフェの店長です。まだ若く、それなのに、落ち着いた雰囲気の店内の奥座敷にはファミコンも置いてあり誰でも遊べます。入口付近のテーブルに目を下ろすと、やはり改造して遊べるようにした懐かしいテーブル型のゲーム機もあります。
「飲める?」
「あ、どうぞ!」
とっさに声を返してくれたのはパートナーの女性。厨房から顔を覗かせています。二人ともふんわりとしていて穏やかな空気で訪れる私たちを優しく包んでくれているような、そんな空間を創っています。
ここには、古びた地球儀や扇風機もあります。私にとっては懐かしいモノも、若い二人には宝物のように見えるんだと思います。
定番のあっさり珈琲と濃厚チョコブラウニーを注文。
いつもなら、若い二人との会話か、ノートパソコンを開いて仕事の続きをします。でも、今日は違います。店内のレイアウトが少し変わった事に気づきました。今までになかった小さな本棚がテーブルにあります。
「前から本がちょこちょこと置いてあったもんな」
と、本なんて読まないのに手を伸ばしたのがコトの始まりでした。まだ何も知らないこの町での出来事です。
phase01_1 カフェの本棚 へ続く
※この放送はstand.fmのAIテキスト読み上げ機能で作成されています。