私たちは読まれたいんです
そう叫んでいる本たちがいます
こんにちは
私たちは郷土本です
この町で生まれ
この町の歴史や暮らし
地名の由来や昔話
名もなき人々の営みを抱えて
静かに本棚に並んでいます
あなたのお店の本棚の
少し奥のほうにいます
背表紙すらも影に埋もれて
手に取られることもなく
ただ時間だけが積もっていく場所にいます
カフェに立ち寄った訪問者は
スマートフォンを眺めながらコーヒーを飲み
旅館に泊まった旅人は
観光地のガイドブックを確認して眠りにつきます
だけど
座った席から私たちの背表紙が目に入り
いや
できることなら大きな書影に気づいて
この町の欠片を手に取ってもらえたなら
一杯のコーヒーは
ただの休憩ではなくなります
一泊は
ただの宿泊ではなくなります
私たちは観光パンフレットではないけれど
この土地の時間と空間そのものです
昔の暮らし
気にもとめられなくなった地名の意味
この町の偉人さんたちの足跡
ページをめくれば妄想が始まり
観光という旅が没入という旅へと変わります
どうか
私たちを見える場所へ
ほんの少しでいいんです
書影に光を当ててくださいませんか
あなたが用意した席から見える本棚で
すでに私たちは待機しています
眠ってはいられません
訪問者が座った席から本棚が見えなかったら
きっと悲しむと思うんです
私たちも
訪問者も
旅人も
私たちは読まれたい
この町をもう一度語らせてもらえませんか
※この放送はstand.fmのAIテキスト読み上げ機能で作成されています。