phase01_1 カフェの本棚
あるカフェの本棚から始まった
刻々と変わる地域の過去~未来の物語
手を伸ばした先にあったのは、外の国を旅する者の日記と写真を収めた本でした。若い店長の私物だそうです。何度も読み返したんでしょう。年季を感じる古びた本です。読み物としての厚みもあります。
若い店長はつい数年前まで旅人でした。たまに過去の話を聞くこともありましたが、それは彼の歴史であり人生の一部です。また近々、海を渡る旅に出るそうです。
「この4年、積み上げた物語なんてないかもしれない」
そう羨ましく感じつつもパラパラと本をめくります。日本ではあり得ない外の国の日常がいくつも目に飛び込んできます。
次の本に手を伸ばしました。色んな発明を紹介するちょっと不思議な本でした。世の中にはなんの役にも立たなさそうな発明ばかりです。でも、ライト兄弟の動力飛行機だったり、エジソンの蓄音機だったり、それぞれの華々しい時代に生まれた発明たちです。きっと本気だったんだと思うんです。
次に手にしたのは、偉人とこの町との関係を時系列でまとめた研究者の本でした。読みやすくまとめられた改訂版です。誰もが知る偉人ですが、それ以外は読み物としての派手さはないかもしれません。ただ、不思議なことに文字しかないこの本からは当時の風景が浮かんでくるんです。当時の風景なんて知る由もないんですが、脳裏にはそれらしい森、川、田んぼ、農場の風景が次々に浮かびます。
「”郷土本”かぁ」
郷土本が何かはあまり想像できませんでした。その土地の過去を残す文字や図や数字や写真が散りばめられた、ただそれだけの本かもしれません。
あっさりとした珈琲と濃厚なチョコブラウニーはとても相性が良いです。あっという間になくなり、そうは言いながら時間も思いの外過ぎていました。
フラッと仕事場から逃げ出してやってきたカフェ。支えを失った不安定な気分は、ここでスッキリな気分に切り替わりました。しっかりと地に足をつけ席を立ち、デジタル会計を済ませてカフェを後にしました。
ただ、スッキリはしたものの、”郷土本”が妙に気に掛かります。
phase01_2 赤ちょうちんの本棚 へ続く
※この放送はstand.fmのAIテキスト読み上げ機能で作成されています。