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快食ボイス722・丼と雑炊のあいだで──箸で食べられるか、匙が要るか

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はじめに──雪と選挙の一日 外はかなりの雪で、この天候は選挙の投票率にも影響を与えそうだなと思っている。 昼に投票へ行ったときはそこまでではなかったが、その後一気に降り始めた。 1月2日の大雪を思い出すような光景で、今日はもう外に出ない方がよさそうだ。 株式市場を見ると、日経平均先物は大きく上がっている。マーケットは自民党勝利を織り込み始めているのだろう。 そうなれば株高・円安、インフレは進む。 一方で、金利は上げたくても上げられない、そんな怖さも同時に感じる。 資産を持つ人はさらに増やし、持たない人はより厳しくなる。 その構図が見えつつある中で、なお自民党に票が集まる。 この因果について思うところはあるが、選挙とはそういうものでもあり、結果は静かに見届けたい。 --- 今日の本題──丼と雑炊の話 さて、ここからが本題だ。 今日は「丼」について話したい。 正確には、丼と雑炊の境目についてだ。 これは以前にも触れたテーマで、僕の中ではかなり重要な問題である。 最近、丼と雑炊の境界が曖昧になってきていると感じている。 もちろん定義は人それぞれでいい。 しかし、僕には僕なりの明確な基準がある。 --- 僕の定義──匙が必要になったら、それは雑炊だ 僕が「これはもう丼ではなく雑炊だ」と判断する基準がある。 箸では食べにくく、匙が必要になった時点で、それは雑炊だろう。 丼であるために、どの程度のツユが許されるのか。 僕の理想は、丼ツユが丼の底に達していないことだ。 --- 内田百閒の嘆き──丼ツユが底に達した瞬間 この感覚は、実は昔の教養人にも共有されていた。 岡山出身の作家・内田百閒は、食と酒を愛した人物だが、エッセイの中でこんな話を書いている。 丼を食べたところ、つゆが丼の底まで達していた。 それを見て、「なんて下品なものを食べてしまったんだ」と後悔した、という内容だ。 当時の知識人、あるいは教養人たちは、ご飯を過度に汚すことを良しとしなかった。 丼である以上、多少は汚れる。 しかし、それでもなお、ご飯は「ご飯としておいしく食べられる状態」であるべきだ、という美意識があったのだと思う。 --- ツユだくの功罪──まずいご飯を救う技術 一方で、つゆが多いことには合理性もある。 いわゆる「汁かけご飯」状態にすると、正直なところ、ご飯がおいしくなくても食べられる。 風味のない、パサパサしたご飯をそのまま味わうのはつらい。 だからこそ、つゆをかけ、ふやかし、雑炊的にすることで、ごまかしが効く。 これはこれで一つの知恵であり、価値だと思う。 牛丼の「ツユだく」も、おそらくはそうしたユーザーイノベーションなのだろう。 安価で、良い米が使えない。 そのご飯を少しでもおいしく食べるための工夫として生まれた、と考えれば納得できる。 だが──。 --- 良い米で、なぜジャブジャブにするのか 問題は、ご飯が本当においしい店で、つゆをかけすぎてしまうことだ。 せっかく良い米を使っているのに、ジャブジャブにつゆをかけてしまえば、ご飯はぶよぶよになり、台無しになる。 これは違うだろう、と僕は思う。 先日紹介した大手町の「江戸そば孫吉」のミニかつ丼は、その点で非常に優秀だ。 ミニサイズでありながら、つゆが多すぎず、肉・衣・ご飯のバランスが見事に取れている。 今は国産の良い肉を使い、厚みもあり、何よりご飯がふやけていない。 丼として、きちんと成立している。 --- 玉子丼が難しい理由 さらに難しいのが、玉子丼である。 正直、あまり食べない。 理由は簡単で、多くの場合「玉子雑炊」になってしまっているからだ。 中途半端に丼ツユが多く、ご飯が半分ふやけた状態。 これが一番おいしくない。 どうせなら、いっそ完全に雑炊として仕上げた方が、料理としては成立する。 中途半端が一番よくない。これは料理全般に言えることだと思う。 「なか卯」の親子丼は、モスフードサービス時代はかなり良かった。 ゼンショー資本に変わってから、少し変わった印象はあるが、今でも店と作り手次第では悪くない。 ただし、玉子のとじ具合は本当に技術で、店ごとの差が激しい。 「ちから」の玉子うどんも同じだ。腕のいい人が作ると、驚くほどおいしい。 --- 天丼という希望──すぎ原の天丼 その点、天丼は比較的おいしい店が多い。 中でも、天満町の「すぎ原」の天丼は別格だ。 沸かした丼ツユに一瞬くぐらせて乗せる、昔ながらの江戸前の作り方。 これは他ではなかなか食べられない。 天丼だけのために行く価値がある店だと思っている。 --- 結論──箸で食べられるから、丼なのだ 本当においしい丼は、残念ながら少なくなってきている。 その多くが、雑炊化している。 繰り返すが、箸で食べられなくなったら、それは雑炊だ。 これはあくまで僕基準であり、異論があって構わない。 ただ一つ、強く言いたいのはこれだ。 ご飯そのものをおいしく食べられない料理は、丼とは呼べないのではないか。 ご飯を損なってしまった時点で、その料理は丼としての本質を失っている。 僕はそう考えている。
2月8日
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