Air Walletの案内が届いた
今日は飲食店の中の人に向けた話になるかもしれない。
ただ、飲食好きには面白い話だと思う。
先日、僕のもとにハガキが届いた。
差出人はリクルート。
内容は、同社が提供するAir Walletへの登録案内である。
アプリをダウンロードし、「COIN+」のアカウントを作成。ギフトコードを入力すれば、抽選で最大1万円、最低500円が当たるかもしれない、というキャンペーンだった。
ここで僕は一つ疑問を抱いた。
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Air WalletはPayPayに勝てるのか?
Air Walletは、仕組みとしてはPayPayと近い。
だが、正面からぶつかっても勝てないと思う。
資本力が違いすぎるからだ。
PayPayは、親会社であるソフトバンクの巨大な資金力を背景に、莫大な赤字を出しながら市場を開拓してきた。
初期は決済手数料すら取らなかった。
飲食店が料理を無料で提供するほどあり得ない話だ。
決済事業も飲食店もタダでは成り立たない。
いまPayPayは、ようやく回収フェーズに入っている。
このシェアを、簡単に他社へ渡すとは思えない。
実際、3月にはPayPayのポイント還元キャンペーンが予定されている。
おそらくAir Walletの動きに対する牽制でもあるだろう。
では、リクルートは何を狙っているのか。
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本命は決済ではない
ここで重要なのが「Airレジ」の存在である。
Airレジは飲食店の売上や決済を一元管理するPOSシステムだ。
クレジットカード、PayPay、楽天ペイ、d払い、現金...
あらゆる決済手段を横断してデータを持っている。
これは非常に強い。
PayPayが把握できるのはPayPay決済のみである。
しかしAirレジは、その店の全体像を把握できる。
・来店客数
・客単価
・時間帯別売上
・決済手段の比率
・日次・月次の推移
すべてリアルタイムで可視化される。
ここまでデータを握っている企業が、単なる決済にとどまるだろうか。
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見えてくる「飲食店金融」
僕の仮説だが、リクルートが真にやりたいのは「飲食店向け金融」だ。
売上データを完全に把握しているということは、信用情報の代替データを持っているということだ。
つまり、
- つなぎ融資
- 運転資金の即時貸付
- 売上連動型返済
これらを、スマホ一つで提供できる可能性がある。
審査根拠はAirレジの実データ。
銀行の決算書より、よほどリアルタイムで信頼できる。
もしこれが実装されれば、飲食店にとって資金調達は劇的に変わる。
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リクルートの戦い方
そもそもリクルートは、フロンティアを切り開くタイプの企業ではない。
既存市場の構造を見極め、二番手・三番手から最適化し、効率的にシェアを奪う。
求人分野でも、既存プレイヤーが伸び悩む中で最適化を進めた。
その延長線上にあるのが、スモールビジネス向け総合支援モデルだと僕は見ている。
飲食店、美容院、小規模サロン——
こうした事業者の
- 売上管理
- 決済
- 資金調達
- 人材採用
- 経営分析
これらをワンストップで握る。
売上データを分析し、「この時間帯は人を一人増やせば売上が伸びる」と示唆し、必要なら求人サービスと接続する。
点ではなく、面で囲い込む戦略である。
Air Walletは、その入口にすぎないのではないか。
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利用者にとっての意味
正直に言えば、一般ユーザーにとっては大きな影響はない。
僕自身、Air Walletを積極的に使う予定はない。
決済においては、PayPayの浸透度が圧倒的である。
「PayPay経済圏」は既に成立している。
だが、水面下では、飲食店の金融インフラをめぐる主導権争いが始まっている可能性がある。
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何を言うかではなく、何をやっているか
企業分析で重要なのは、広報やスローガンではない。
何をやっているかである。
Airレジで売上データを握り、そこにウォレットを接続する。
この動きは偶然ではない。
5年後、答え合わせができるだろう。
そのとき、飲食店金融の中心にいるのが誰なのか。
いまはまだ、各社が布石を並べている段階だと僕は思う。