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快食ボイス741・「場所で勝てる店」が崩れるとき

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ある場所からランチが消えつつある 少し風邪気味の声で恐縮だが、声が聴きにくいところは文章で確認してほしい。 今日、昼に街中へ出た。 流川から胡町、薬研堀にかけての一帯である。 中央通りを挟んで西側、いわゆる八丁堀や立町とは少し空気の違うエリアだ。 この界隈は、電車通りに近い北側であれば、昔からランチ営業をする店が一定数あった。 夜の街のイメージが強いが、昼間はビジネス客を相手にした飲食店がきちんと機能していた地域である。 だが、今回はこれまで以上に違和感があった。 --- 「開いていない」という異変 目についたのは、昼営業をやめている店が増えていることだ。 「ここはやっていたはずだ」と思う店が閉まっている。 さらに決定的なのは、人が歩いていない。 以前なら、スーツ姿の男性会社員が一定数いた。 近隣には金融機関もあり、昼休みに出てくるビジネスパーソンの流れがあった。 ゼロではない。 だが、驚くほど少ない。 これでは昼営業をやめる判断も理解できる。 優勝劣敗は当然ある。 人気店は今も客をつかんでいる。 しかし、明らかに「場所で成立していた店」が崩れ始めている。 --- 場所で勝てる店の意味 郊外の人気店とは構造が違う。 目的地型であり、「そこに行く」と決めて客が動く。 予約前提の店も多い。 一方、胡町や流川北側のランチは、 「今日はこの辺で食べよう」という選択の積み重ねで成立してきた。 つまり、場所で勝てる店である。 だからこそ、このエリアの変化は定点観測として意味がある。 ここが崩れれば、それは外食全体の先行指標になりうる。 --- 家計が最初に削るもの 背景は明白だ。 給料は大きく上がらない。 社会保険料は制度を変えなければ上昇基調。 インフレは一時的に落ち着いても、水準は高いままだ。 手取りは実質的に圧迫される。 東京都の家計調査でも、 節約対象の1位は食費、2位は外食費だった。 外食は可処分支出の中でも調整弁になりやすい。 真っ先に削られる。 その現象が、いま胡町周辺で可視化されているのではないかと感じた。 --- デリバリー撤退という象徴 ちょうどこの日で、フィンランド発のデリバリー企業であるWoltが日本を撤退する。 デリバリーは店内飲食より価格が高い。 時間経過による品質劣化もある。 インフレ下では真っ先に削られやすい。 市場はUber Eatsや出前館がシェア上位を占め、価格競争とクーポン合戦の消耗戦が続く。 資本力の差がそのまま耐久力の差になる。 これは過去の牛丼戦争やハンバーガー価格競争でも見られた構図である。 デリバリーの後退と、街中ランチの減少。 別の現象に見えて、根は同じである。 --- 高い店を紹介しにくい空気 飲食店を紹介する立場として、悩みもある。 僕が紹介している店は、価格が高くても価値がともなっている店だ。 だが、財布事情が厳しいとき、人は「今はやめておこう」と判断する。 紹介する僕も、このことは意識しなければならない。 日経平均が大きく下落する今日のような日には、心理的にも財布は締まる。 外食は半ば娯楽であり、文化的活動だからこそ真っ先に揺れる。 --- 失われる可能性 経営が厳しくなれば、撤退する店も出てくる。 その中には、将来もっと評価されるはずだった店も含まれる。 芽が出る前に摘まれる可能性があるのだ。 飲食好きとして、それは単なる経済現象ではなく、文化的損失である。 --- これからを見る視点 広島でいえば、電車通り沿い、胡町から銀山町の南側あたりは、外食の温度を測る「体温計」のような場所である。 ここが戻るのか、さらに冷えるのか。 それは広島の消費の方向性を映す。 僕は様々な数字もチェックしているが、引き続き現場・現実・現物の確認も行う。 街のランチがどうなるのか。 それは、暮らしの潤いがどうなるのか、という問いでもあるのだ。
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