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快食ボイス743・タコスの「正体」がやっと少し見えてきた

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はじめに 今日は「タコス」について話をしてみたい。 最近、広島市内でもタコスの専門店が増えてきた。 食べる機会も増えていると思う。 ただ僕は、このタコスという料理が長いことよく分からなかった。 「これはいったいどういう料理なのか」ということが、ずっと腑に落ちなかったのだ。 最近になってようやく、その輪郭が見えてきた。 今日はその話を整理してみたい。 --- 今日はTex-Mexの話ではない 最初に前提を整理しておきたい。 タコスの話をするとき、必ず出てくるのが Tex-Mex(テックスメックス) という料理だ。 これはメキシコ料理がアメリカに入り、独自に変化した料理のことを指す。 ただ、これを一緒にすると話が非常にややこしくなる。 なので今回は メキシコ料理としてのタコス に限定して話をする。 --- タコスは軽食なのか、それとも食事なのか 僕が最初に疑問に思ったのはここだった。 タコスは 軽食なのか、それとも食事なのか。 広島で見かけるタコスは、だいたい直径15センチくらいの小さなトルティーヤに具を乗せて、それを自分で包んで食べるスタイルが多い。 これだと、どう見ても軽食に見える。 例えば僕のような年齢の人間なら、4つくらい食べれば満足する。 しかし若い人なら、もっと食べないと足りないはずだ。 そうすると「ランチとして成立するのか?」「値段とのバランスはどうなのか?」という疑問がずっとあった。 --- そもそもメソアメリカには牛も豚もいなかった タコスの具としてよく見かけるのは - カルニタス(豚肉のコンフィ) - スアデロ(牛肉の煮込み) といった料理だ。 しかしメキシコ周辺の地域、メソアメリカ とには牛も豚も存在していなかった。 豚の祖先は東南アジア周辺のイノシシ。 牛の祖先は西アジアの オーロックス という野生牛である。 つまり、どちらもユーラシア大陸の動物だ。 これらがアメリカ大陸に入ってきたのは、16世紀のスペインによる侵略以降である。 それまでのメソアメリカで家畜化されていた動物は、主に七面鳥だった。 --- 小麦もまた外来の食材だった タコスの皮はトルティーヤと呼ばれる。 このトルティーヤには二種類ある。 - コーントルティーヤ(トウモロコシ) - フラワートルティーヤ(小麦) 広島の店では小麦のトルティーヤが多いが、伝統的なのはトウモロコシになる。 小麦もまた、メソアメリカには存在していなかった作物だ。 小麦の原産地は西アジアで、これもスペイン人が持ち込んだものである。 つまり現在よく見る - 小麦のトルティーヤ - 牛肉や豚肉の具 というタコスは、歴史的には比較的新しいということになる。 --- トルティーヤは皿だった ここで重要なのがトルティーヤの役割だ。 メソアメリカでは、トルティーヤで食べ物を包んで食べる文化が何千年も続いている。 つまりトルティーヤは皿の役割を果たしていた。 そこにスペイン人が持ち込んだ肉料理が加わり、それを包んで食べるようになった。 これがタコスの基本構造になるのだ。 --- 庶民は硬い肉を食べていた ここで僕はようやく理解できた。 牛や豚を屠れば、 - 柔らかい良い肉 - 内臓 - 硬く筋ばった肉 が出てくる。 当然、柔らかくて美味しい部分は支配層が食べる。 庶民に回ってくるのは内臓や硬い肉である。 そこで生まれたのが煮込み料理だった。 長く煮込めば、硬い肉も柔らかくなる。 カルニタスやスアデロは、まさにそうした料理なのだ。 --- 屠畜場の近くで生まれた屋台料理 もう一つ重要なのは内臓料理である。 胃袋や舌などを使ったタコスもある。 しかし内臓は傷みやすい。 冷蔵設備のない時代には、屠畜場の近くでしか食べられなかった。 つまり、屠畜場の近くにある、肉が売られている市場の屋台で食べられる料理だった。 これがタコスの屋台文化につながっていく。 --- 玉ねぎ、パクチー、ライムの意味 煮込んだ肉だけだと、どうしても風味が弱い。 そこで加えられるのが - 玉ねぎ - パクチー - ライム - 唐辛子 である。 これにより、香り、酸味、辛味、ビタミンが補われる。 炭水化物(トルティーヤ)とタンパク質(肉)に、野菜の要素が加わる。 非常に合理的な構成になっている。 --- 本場のタコスはかなり大きい メキシコの動画を見ると分かるが、タコスはかなり大きい。 片手では持てないくらいのサイズで、具もたっぷり入っている。 つまりタコスは 軽食ではなく、しっかりした食事 なのだ。 ただし夜食としてもよく食べられるようだ。 --- 日本で近いのは鮨かもしれない 日本で近い存在を考えると、僕は鮨を思い出す。 江戸時代の鮨は屋台料理だった。 しかもかなり大きく、おにぎりに魚が乗ったようなサイズだったことがわかっている。 それを屋台で、職人や労働者が食べていた。 つまり当時は決して高級料理ではなかった。 タコスも同じ構造を持っている。 --- 料理を理解するには歴史が必要だ 今回改めて思ったのは、料理を理解するには歴史が必要ということだ。 例えば広島のお好み焼きでも同じで、その背景を知らなければ、お好み焼きにサーロインステーキを入れるという発想も生まれるだろう。 しかし普通そんなことはしない。 なぜなら僕たちはそれがどういう料理かを理解しているからだ。 --- 僕たちは歴史の断片しか知らない 僕たちは3000年間の蓄積した味覚を持つことはできないし、そんな人間はいない。 だからこそ、 - 歴史 - 経緯 - 社会構造 こういうものを調べて、今の料理とどう繋がっているのかを理解するしかない。 そうすることで、その料理の本質が少し見えてくる。
4日前
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