1981年、19歳。
高円寺で暮らしていた浪人生が、渋谷のファイヤ通りにあった小さな店で出会ったのは、ずっしりと重いドイツ製のウールコートでした。
それまで「古着」を特別に意識していたわけでもないのに、なぜかその一着に惹かれ、買ってしまう。
今振り返れば、それが自分にとって最初のヴィンテージ体験だったのかもしれません。
田中康夫『なんとなく、クリスタル』を読み、東京の街そのものに興味を持っていた時代。
高円寺から渋谷へ出かけ、店を覗き、服を手に取る。
その一着との出会いは、やがて古着屋を営むことになる自分の、その後を知るはずもない小さな始まりでした。
そして40年以上が過ぎた現在、自分は古着屋をやっています。
あの異様に重かったコートは、いったい何だったのか。
なぜ、あの一着に惹かれたのか。
「古着屋になる前の古着屋店主」の記憶を、1981年まで遡って話します。
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