最近、飲食店の閉店が増えている気がする、という話をしてみたい。
例年12月は閉店が多い時期ではある。
家賃や各種契約の更新タイミングでもあり、年を越す前に区切りをつける店も多い。
さらに年明けの2月は外食需要が冷え込みやすく、「年をまたぐより、ここで」という判断が働きやすい。
ただ、それを差し引いても、今年は少し多い。
これはあくまで体感だが、感覚だけで片付けたくなくて、数字を追ってみた。
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飲食店は、まだコロナ前に戻っていない
経済産業省の外食産業分析を見ると、2019年(コロナ前)を100とした場合、2024年時点の飲食店・飲食サービス業は90%にとどまっている。
つまり、まだ10%戻っていない。
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20250313hitokoto.html?utm_source=chatgpt.com
一方で、第三次産業全体ではすでに100%を超えている。
宿泊業に至っては120%まで回復している。
この数字を見ると、飲食店の回復の遅さが際立つ。
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圧倒的に厳しいのは「居酒屋」
業態別に見ると、差はさらに鮮明だ。
ファーストフードは2015年比で120%超。
喫茶店、食堂、レストランはおおむね9割台まで戻している。
しかし、居酒屋(パブレストラン)は6割未満。
58〜59%程度で負けっぱなしだ。
これは正直、かなりきつい。
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インフレと実質賃金の問題
理由はシンプルだ。
インフレによって、仕入れ価格、光熱費、家賃、すべてが上がっている。
飲食店は価格に転嫁しなければ、続けられない。
しかし、店を支えている給与生活者の実質賃金は伸びていない。
名目賃金はわずかに上がっているように見えても、そのお金で買えるものは減っている。
しかし、電気代や最低限の食費は削れない。
真っ先に削られるのが、外食になる。
これは日本だけでなく、アメリカやイギリスでも同様の現象が起きているようだ。
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解決策は「賃上げ」と「インバウンド」だが
経産省のレポートでは、期待される要因として「賃上げ」と「インバウンド」が挙げられている。
ただ、賃上げは時間がかかる。
10%、20%と一気に上げられる企業はほとんどない。
しかも賃金は上げ下げされると、生活設計が成り立たない。
一方、インバウンドも地域差が大きい。
東京、京都、大阪ならともかく、
広島クラスでは、飲食店全体を支えるほどの力にはなりにくい。
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飲食店を支えているのは、結局誰か
結局、飲食店を支えているのは中間層の庶民である。
一部、高額所得者が支える店もあるが、数は少ない。
ほとんどの店は、日常の外食をする人たちによって成り立っている。
その層の余裕が戻らない限り、飲食店の本格的な回復は難しい。
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それでも応援はやめない
状況はかなり厳しい。
しかも、この状態が年単位で続く可能性がある。
それでも、これまでも淡々と応援してきたし、これからもそうするつもりだ。
ただ、本来なら歴史を紡ぐべき優良店が閉店している事実は、本当に辛い。
それが、今回あらためて数字を追って感じた、率直な実感だ。