卵を割って、
砂糖を入れて、
箸で混ぜる。
鮭を焼いて、ご飯をよそって。
お盆にのせたら、二階へ上がる。
ほんの少し笑ってくれる。
それだけで嬉しい日がある。
寂しかったことも、
苦しかったことも、
なかったことにはしない。
優しくできなかった夜もある。
言えなかったこともある。
それでも、その人を思い出すとき、
苦しかった顔だけが浮かぶわけじゃない。
ふっと笑った顔。
かけてもらった言葉。
教えてもらった味。
人の記憶って、不思議です。
大きな出来事より、
台所で何気なく繰り返していることの中に、
その人が残っていたりする。
今日も卵を割る。
味をみる。
もう少し。
ほんの少し。
「砂糖を、もうひとさじ。」
理由は、誰にも話さなくていい。
でも、この甘さだけは忘れない。
そんな一曲になりました。
📝 この曲について、noteに書きました。
なぜ甘い卵焼きなのか。
人の記憶は、なぜ何気ない味や手の動きに残るのか。
『砂糖を、もうひとさじ。』に込めた景色を、もう少し言葉にしています。
noteはこちら
https://note.com/kanousei/n/n04d06242bd91
曲を聴いたあと、よかったらゆっくり読んでみてください。
🎧 オリジナル曲
『砂糖を、もうひとさじ。』
[Verse 1]
卵を割って
砂糖を入れて
教えてもらったように
箸で混ぜる
鮭を焼いて
ご飯をよそって
お盆にのせたら
二階へ上がる
カーテンの向こうは
もう昼なのに
この部屋だけ
まだ朝みたい
「ここに置くね」
返事がなくても
それでよかった
[Pre-Chorus]
たまに ほんの少し
笑う日があった
一日なんて
続かなかった
ほんの数時間も
なかったかもしれない
それでも僕には
特別な日だった
[Chorus]
笑ってる
今日は
笑ってる
それだけで
嬉しかった
何か 話さなくてもいい
どこかへ
行かなくてもいい
今日 ここにいる
生きててくれて
よかった
それだけだった
終わらないでなんて
言えなかったから
僕もただ
隣で笑ってた
[Verse 2]
教室の後ろに
あなたを見つけた
眠れない夜のあと
それでも来てくれた
具合が悪いのも
なんとなくわかってた
それでも
みんなと同じ場所に
立っていた
振り向かないふりをして
何度も後ろを見た
嬉しいって
言えばいいのに
あの頃の僕は
そういうことほど
言えなかった
[Pre-Chorus 2]
辛いなら
僕のせいにしていいよ
そんなことを
よく言っていた
あなたは少し笑って
「ありがとう」
「ほんとに
優しい子だね」
その言葉が
ずっと嬉しかった
[Chorus 2]
笑ってる
僕を見て
笑ってる
なぜだろう
それだけで
ほっとした
会うたびあなたは
同じことを言った
「会うと
気持ちが楽になる」
僕に何ができたのか
今でもよくわからない
ただあなたが笑うと
僕のほうまで
嬉しくなった
[Bridge]
ある夜
全部あなたのせいにした
言えなかった寂しさまで
ぶつけてしまった
大切にしていたものも
倒してしまった
あなたは
僕の目を見て
怒らなかった
「寂しい思い
させたね」
それだけ言った
僕は
見えないところまで行って
声を殺して
泣いた
しばらくして戻ると
土が散らばっていた
しゃがんで
ひとつずつ
手で集めた
元に戻したかったのは
鉢だけだったのかな
[Verse 3]
ずっと先の
晴れた日
たくさんの人の中に
あなたがいた
身体はつらそうで
それでもそこにいた
僕を見つけた
その瞬間
不思議なくらい
少し笑った
ああ
この顔を
僕は知ってる
ずっと前から
知ってる
[Final Chorus]
笑ってる
今も思い出すのは
笑ってる顔
苦しかった日を
忘れたわけじゃない
寂しかったことも
消えたわけじゃない
それでも
あなたは
それだけじゃなかった
僕がまだ
何者でもなかった頃から
何度も
認めてくれた
「優しいね」って
その言葉を
僕は今も持っている
だからたぶん
どんな日が来ても
歩いていける
強いからじゃない
あなたを
知っているから
[Outro]
今日も
卵を割る
箸で混ぜて
味を見る
もう少し
ほんの少し
砂糖を
もうひとさじ
誰にも
理由は話さない
でも
この甘さだけは
忘れない
【作品について】
心理職として、守秘義務と職業倫理を大切にしています。
この作品は、特定の相談者さん・患者さんの相談内容や体験を題材にしたものではありません。
また、作品の背景や着想が実体験なのか創作なのかについても、あえて説明していません。
聴いてくださった方の中に浮かんだ人や景色を、そのまま大切にしてもらえたらと思います。
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