【その①】応用行動分析学を学問にしたもの
応用行動分析学の学問としてのキッカケ
・1968年D. M. Baer et al.「応用行動分析学7大原則」
・1987年 再検討
・7つの概念をひとつずつが熟達化、流暢化し相互不可分に。
①応用的
・ターゲット行動、支援方法、結果の社会的重要性
・一般的な社会的合意ができている行動、本人、家族、関係者の少人数のなかで合意が得られた行動などを増やすこと
・社会的妥当性をアセスメントする場合、一般の不特定な人々、あるいは関係者を対象とする。
1)介入前にターゲット行動が本人の生活の質の向上につながるか、選択した介入方法は他 の方法に比べて妥当なものであるかを検討
2)介入後には、介入効果が十分に大きかったかを分析。適切な行動を増やし、結果的に問題行動が減っていくことが目的。短期的に減らす技法を用いる場合は、厳格なガイドラインに従う。
Cooper et al. (2020)は、法律・規定・ 倫理の条件に従うこと、他の適切な行動を増やすこと、安全を確保する手続きを用いること、記録を取りそれに基づいて効果的な介入を決めることなどの指針を提示している。
社会的に重要な行動…誰にとって必要な行動なのかを明示する。
例)支援者が、子どもの問題行動に困っている親に対して、親の不安を取り除こうとすることに専念し、子どもの発達支援や環境の整備などを行わない場合など
→ 実践者自身が行動倫理学をもとに判断し同僚、スーパーバイザーと討議する。
・行動カスプ・基軸行動…「スキルや適切な行動の拡張に大きく寄与する行動」。それらに介入することで行動レパートリーと機能とが大きく変化するか評定する。
・社会福祉モデル…本人に選択肢を提示するのと同時に、選択行動ができる環境づくりへの介入を行う。
行動レパートリーの拡張と環境整備を徹底することで、生活の質を高める。
効果の評定は、データの事後 アセスメントの結果を見て何がどこまで明らかになったか、明確に主張できる範囲はどこまでかなどを論述し、今後の研究と実践の方法を具体的に提示する。
うまくいった事例だけではなく、うまくいかなかった事例もフェアに分析
②行動的:個人と環境との相互作用
「行動=死人が行うことができないこと」
・言語行動、言行一致、等価関係など…自身の反応が刺激となって自身の別の反応に影響を与えるので、環境(自身の生み出した刺激)と個人の反応の相互作用を行動である
③分析的:シングル・ケース研究デザイン
・毎回のデータ・プロットによってデータラインの傾向、切片、変動性などを常に把握しながら、介入方法を決定し、独立変数と従属変数の関係を見出していく
・環境条件の変化(独立変数)に対応する行動(従属変数)の変化を明らかにすることが、分析的ということ
・最も重要な介入条件の効果を際立たせ、交絡変数の要因を相対的に減らすような研究計画 を組み立てる。
1)反転デザイン(reversal design)…交絡変数を排除でき、内的妥当性を最も高めることができる。繰り返し独立変数を抜き差しすることで、環境条件と行動との関係のみを、直接的に明らかにできる
2)多要素デザイン(multielement design)
3)多層ベースラインデザイン(multiple baseline design)…介入がなくなった後にも効果が維持され、般化がなされることが予測できる場合に用いる。一度獲得されると逆戻りしない行動に焦点を当てる場合に用いる。学習・発達支援への効果評定に用いる。
4)基準変化デザイン(changing criterion design)…条件設定の基準値を一定の割合で上げる(あるいは下げる)ことで、その基準値に対応した値に、行動が収束するかを分析する方法
④技術的であること
・技術=一定の条件を満たせば、データが再現できる仕組みである。
・異なった研究室や実践現場で、系統的再現研究のデータ収集ができる仕組みを構築しておくことが最も大切である。
・決定樹・フローチャートなどの研究・実践プロトコルを作成する
・介入プログラムの開発者が実施して成果を得た後、別の研究者・実践者がその技法を使った介入を実施し、その効果を分析する。
【参考文献】
山本(2021)徹底的行動主義と応用行動分析学――ヒューマンサービスの科学・技術の共通プラットホーム, Japanese Journal of Behavior Analysis 2021, Vol. 35, No. 2
【ベストコメント賞】
行動分析学入門の青い本見てると「徹底的だな!」って思ったことあります。「こういう結果になったけど●●だと●●とは言い切れないからもっと□してまた分析する」みたいな
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