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吾輩は歴史を考える猫である 0002

0002 吾輩は、主人が広げたままにしている書典を、上からそっと覗き込んでみた。そこには「歴史の大きな流れを見てみよう」という、なんとも仰々しい表題が踊っている。 人間という生き物は、自分たちが生まれる遥か昔のことにまで首を突っ込みたがる、誠に奇妙千万な性分を持っているらしい。 過去の亡霊を追いかける子供たち ふと見れば、挿絵の中の小娘が「小学校で学んだ人物は、一体どのくらい昔の人なのか」と首を傾げている。隣にいる小僧も負けじと、「あの古い建物や道具はいつ頃作られたのか」と、神妙な顔をして考え込んでいるようだ。 吾輩からすれば、昨日食った鰹節の味さえ鮮明であれば、数百年前の人間が誰であろうと、知ったことではない。しかし、この幼き人間どもにとっては、自分が生まれる前の「時」を整理することが、何やら一大事であるらしい。 衣服の変遷と異邦人の影 そこへ教師らしき大人が現れて、「次のページの図解を見て、歴史の『流れ』を考えてみるがいい」と、尤(もっと)もらしい助言を授けている。 • 小学校で出遭った人物や文化財、そしてこれから知ることになる事物が、ひと続きの絵巻物のように描かれているという。 • 「服装の違いに注目せよ」と、もう一人の大人が付け加える。 なるほど、人間は季節や時代に合わせて、せっせと皮を脱ぎ捨てるように服を着替える。吾輩のように、一年中同じ毛並みを誇っているわけにはいかないらしい。さらに、日本という島国に「外の世界」からやってきた者たちを探してみろとも言っている。 吾輩の眼から見た「歴史」 どうやら彼らは、過去から現在へと続く一本の大きな「川」のようなものを、この紙面の中に見出そうとしているようだ。世界との繋がり、装いの変化……そうした断片を繋ぎ合わせて、自分たちがどこから来たのかを確かめようとしているのである。 「歴史の流れ」とは、人間たちが自分たちの立ち位置を確認するために拵(こしら)えた、壮大な迷路のようなものかもしれない。 主人が居眠りを始めたのを幸い、吾輩は少しばかりその「次のページ」とやらを捲ってみたくなった。そこには、どんな奇妙な人間たちの足跡が、大河の如く流れているのであろうか。
1月21日
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