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吾輩は歴史を考える猫である 0003

0003 吾輩は、主人が居眠りしている隙に、そっと前足で頁(ページ)を繰ってみた。そこには「歴史の大きな流れを見てみよう」などという、人間どもの野心に満ちた言葉が踊っている。 人間どものあくなき好奇心 挿絵の中の小娘は、「小学校で学んだ人は、どのくらい昔の人かな?」と、首を捻って過去の闇を覗き込もうとしている。隣にいる小僧も負けじと、「文化財はいつ頃つくられたんだろう?」と、自分たちが生まれる遥か前の遺物に思いを馳せているようだ。 人間というやつは、己の数十年という短い一生では満足できず、何百年、何千年も前の「時」を欲しがる、実に欲深い生き物である。彼らはこの紙面を「川」に見立て、そこを流れる人物や文化財の破片を拾い集めることで、自らの正体を突き止めようとしているらしい。 地面の色と奇妙な変遷 次の頁を開けば、そこにはまさに「歴史の流れ」と題された、色とりどりの絵巻物が広がっていた。 * 地面の色と時代の足跡 地面の色が時代ごとに塗り分けられており、それが時の流れの「目印」になっている。 * 緑豊かな太古の地では、土偶や埴輪が転がり、聖徳太子と思しき男が「和をもって貴しとなす」と、猫の吾輩にも聞こえぬほど静かな声で説いている。 * やがて時代は武士の世となり、鎧を纏った荒くれ者たちが城を構え、織田信長のごとき男が「平等だぜ!」と威勢のいい声を上げている。 * 装いの変遷と異邦人の影 教科書の指南によれば、「服装のちがい」に注目せよとのことだ。 * なるほど、最初は簡素な布を纏っていた人間たちが、いつの間にか華やかな着物へ、そして気づけば窮屈そうな背広へと姿を変えている。 * また、海の外から黒船や見慣れぬ顔立ちの「外国の人」がやってくるのも、この流れの面白いところである。 * 現代への滔々(とうとう)たる流れ さらに流れを追えば、自由の女神が立ち、ガンジーが「新しい憲法の話をします」と語り、終いには新幹線やパンダ、挙句の果てにはロボットまでが闊歩する、あわただしい現代へと辿り着く。 吾輩の眼から見た「歴史の流れ」 人間たちは、これら小学校で出遭った事物を繋ぎ合わせ、一つの大きな「物語」として自分たちの歴史を振り返ろうとしているのだ。 しかし吾輩に言わせれば、どんなに服を着替え、どんなに高い建物を建てようとも、人間が腹を空かせ、眠くなれば横になるという本質は、土偶の時代から何ら変わっておらぬ。この「歴史の流れ」とやらを泳いでいるつもりで、実のところ彼らは、同じところをぐるぐると回っているだけではないのか。 主人がふと目を覚ましたようだ。吾輩はこの深淵なる考察を、一欠伸(あくび)とともに喉の奥にしまい込むことにした。
1月22日
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