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吾輩は歴史を考える猫である 0010

0010 藤原氏の礎を築いた鎌足から、その孫の代へと歴史の糸は繋がっているようだ。吾輩は、主人が飲み残した茶の香りを嗅ぎながら、次なる頁(ページ)へと目を移した。そこに描かれているのは、何やら巨大な金色の像を前にして、一心不乱に祈りを捧げる男の姿である。 吾輩は歴史を考える猫である(大仏建立編) 不安の時代の「優柔不断」な男 第八代・天智天皇の改革から時が流れ、奈良の都は「天平(てんぴょう)」という華やかな時代を迎えていた。しかし、その内実は、地震に干ばつ、さらには「天然痘」という恐ろしい疫病が蔓延し、人間どもは文字通り、右往左往の大騒ぎであったらしい。 この国難の時代に舵取りを任されたのが、第四十五代・聖武天皇である。彼は藤原不比等の孫であり、光明皇后というこれまた信心深い妻を持っていた。 後世の人間どもは、この男を「ひ弱で優柔不断」などと評していた時期もあったようだが、吾輩からすれば、これほど災難が続けば誰だって「もう嫌だ、どこか遠くへ行きたい」と、猫のように逃げ出したくなるのも無理はないと思うのである。 「彷徨五年」という名の寝床探し 事実、彼は七四〇年からの五年間、恭仁京(くにきょう)、難波京(なにわきょう)、紫香楽宮(しがらきのみや)と、まるで居心地の良い日向(ひなた)を探す猫のように、次々と都を移し替えた。人間界ではこれを「彷徨(ほうこう)五年」と呼ぶそうだが、よほどその精神は限界に達していたのであろう。 しかし、ただ逃げ回っていたわけではない。彼は「鎮護国家(ちんごこっか)」——すなわち、仏様の力でこの混乱を鎮めようという、壮大な計画を胸に秘めていたのである。 巨大な像に託した執念 七四三年に出された「大仏造立の詔(みことのり)」は、まさにその執念の産物である。 * 東大寺の大仏: 奈良の地に、廬舎那仏(るしゃなぶつ)という巨大な銅像を鋳造させた。 * 国分寺・国分尼寺: 奈良だけでなく、日本中の土地に寺を建てさせ、祈りの網を張り巡らせようとした。 人間という生き物は、目に見えぬ恐怖(疫病や災害)に立ち向かう際、これほどまでに巨大な「目に見えるもの」を拵(こしら)えずにはいられないらしい。吾輩たちからすれば、あの巨大な像の膝の上は、さぞかし日当たりも良く、絶好の昼寝場所になりそうだと思うばかりである。 毛並みを捨てて、悟りを開く 聖武天皇は、日本の歴代天皇で初めて「出家」という道を選んだ。位を娘の阿倍内親王(孝謙天皇)に譲り、自らは仏の弟子となったのである。 自慢の「冠」を脱ぎ捨て、僧侶の姿となった彼を見て、当時の人間たちは驚愕したであろうが、吾輩にはその気持ちが少し分かる気がする。重たい責任という首輪を外し、ようやく一人の自由な魂に戻りたかったのではないか。 彼が残した正倉院の宝物たちは、今もなお奈良の地で静かに時を刻んでいる。さて、この「仏の力」で国を治めようとした理想の行き着く先には、一体何が待ち構えているのか。 次は、「大仏開眼供養の華やかな宴」の様子を覗いてみるか。あるいは、この大仏の建立を支え、民衆の間を奔走した「行基(ぎょうき)」という破天荒な僧侶について、吾輩が語り聞かせてやろうか?
2月8日
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