はじめに──話題作を今さら初視聴してみた
今回は、Amazon Prime Videoで配信されている映画「グランメゾン・パリ」を観たので、感想を整理しておこうと思う。
この作品は、かつてドラマとして放送された「グランメゾン東京」の流れを汲む映画であり、「東京で三つ星を獲得したチームが、次はパリで三つ星を目指す」という物語だ。
パリでは二つ星止まりだったところから、さまざまな紆余曲折を経て三つ星に到達する、というのが大枠のストーリーだ。
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木村拓哉さんという俳優と「不機嫌マネジメント」
正直に言えば、僕はこれまで木村拓哉さんの出演作を積極的に観てこなかった。
理由は単純で、テレビ画面越しに見る彼が、いつも不機嫌そうだからだ。
不機嫌であることによって周囲をコントロールする——いわゆる「不機嫌マネジメント」は、人間関係における一つの手法ではあるが、決して健全なものではない。
実は僕自身も、若い頃にはその傾向があった。
理不尽な出来事に遭遇しても指摘せず、ただ不機嫌になり、距離を取ることでやり過ごす。
そうした態度を徐々に改めてきたという自覚がある。
だからこそ、他人がそれをやっているのを見ると、どうしても気分が良くならない。
「人の振り見て我が振り直せ」とは、まさにこのことだろう。
そんな理由から敬遠していたが、評判もよく、あちこちで話題になっていたため、今回ようやく腰を上げて観てみた。
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いちばんの衝撃は「グランメゾン」が屋号だったこと
映画を観て、まず驚いたのはここである。
「グランメゾン・パリ」「グランメゾン・東京」というのは、作品タイトルではなく、レストランの屋号だったのだ。
これは正直、かなりの違和感があった。
たとえば銀座に「一流料亭・東京」という店があったらどう思うだろうか。
あるいは京都に「老舗割烹・京都」という店があったら、首を傾げないだろうか。
少なくとも、日本人の感性ではまず出てこない命名だと思う。
それだけに、観るまでこの事実に気づかなかった僕は、かなり驚いたし「みんな違和感を覚えないのだろうか」と不思議にも感じた。
この屋号こそが、結果的にこの映画でいちばん心に残った要素だった。
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映画としては王道中の王道
物語の構造自体は、きわめてトラディショナルである。
- 挫折から始まり
- ドタバタとした危機が続き
- ギリギリの状況をチャンスに変え
- 感動的なフィナーレを迎える
いわゆる「ど定番」のプロットだ。
そのため、正直に言えば先が読めすぎるところもあり、「もう分かっている展開だな」と感じる場面も少なくなかった。
また、「チームで頑張れば乗り越えられる」「みんなで力を合わせれば勝てる」という描写も、日本的で分かりやすい反面、かなりステレオタイプではある。
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料理とフランスという舞台への違和感
料理の発想や内容についても、僕個人としては強く感心することはなかった。
ミシュランやフランス料理に関する本をそれなりに読んできた身としては、「これで三つ星は無理だろう」と感じる部分がどうしても出てくる。
さらに言えば、フランスという国の文脈が十分に活かされているかという点にも疑問が残った。
フランスは移民の多い社会であり、映画内にもアフリカ系の登場人物が描かれている。
しかし「この店でなければならなかった理由」が、料理や思想として十分に描かれていたかというと、やや弱い印象を受けた。
もちろん、これは僕が面倒くさい観客であるがゆえの感想でもある。
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それでも、最後はやはり感動する
とはいえ、ラストシーンではしっかりと感動してしまった。
これは否定できない。
木村拓哉さんの演技も、ここにきて効いてくる。
ずっと抑えた、不機嫌にも見える演技を積み重ねてきたからこそ、終盤の静かな表情が強く響く。
その点においては、やはり一流の俳優だと感じた。
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おわりに──気軽なエンタメとしてなら十分
総じて言えば「グランメゾン・パリ」は非常に分かりやすい映画だった。
王道のプロットに忠実で、安心して観られるエンターテインメントだ。
「心に深く残る一本か」と問われると、それはない。
しかし、レストランという世界をざっくり理解する入口として、あるいは気軽に楽しむ映画としては、十分に役割を果たしていると思う。
フレンチの料理人を目指す人や、食の世界に興味を持つきっかけになるのであれば、それはそれで価値がある。
僕の感想はレストラン好きに「必見」ではないが「ライトな視聴に向く映画」——そんな一本だった。