1950(昭和25)年、友人・長光太宛ての書簡で詩「碑銘」とともに書き送られた詩。同年6月25日、朝鮮戦争が勃発している。
自らも被爆した戦争体験からようやく立ち上がろうとしているとき、繰り返し起こされる争いに民喜は憤りと深い絶望を感じたのではないだろうか。
しかも日本はこの新しい戦争で軍需景気を迎えようとしていた。
絶望のなかに強い平和希求がみえる。いま現在、私たちの世界にも訴えかける詩。
「家なき子のクリスマス」 原民喜
主よ、あわれみ給へ 家なき子のクリスマスを
今 家のない子はもはや明日も家はないでせう そして
今 家のある子らも明日は家なき子となるでせう
あはれな愚かなわれらは身と自らを破滅に導き
破滅の一歩手前で立ちどまることを知りません
明日 ふたたび火は空より降りそそぎ
明日 ふたたび人は灼かれて死ぬでせう
いづこの国も いづこの都市も ことごとく滅びるまで
悲惨はつづき繰り返すでせう
あはれみ給え あはれみ給え 破滅近き日の
その兆に満ち満てるクリスマスの夜のおもひを
音楽:BGMer
http://bgmer.net
「家なき子のクリスマス」は合唱曲にもなっています。
https://youtu.be/098_IbnclTA?si=JKIv-7yiDT-fwG_W
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