いま広島で起きている 牡蠣の大量死について考えてみたい。
広島に暮らす者にとって、牡蠣は単なる食材ではない。
冬になると食卓に現れ、瀬戸内海の季節感を知らせてくれる、いわば生活文化そのものだ。
だが今年、その牡蠣が斃死している。
原因は、まだわからない。
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「10月の突然死」という違和感
養殖業者の声を聞くと、10月の途中までは、むしろ順調だったという。
では、なぜ10月に入ってから突然死が始まったのか。
- 水温の急変?
- 高塩分濃度の影響?
- 低酸素状態?
- 餌不足?
- アカシオ?
- 病原体?
どれも仮説としては挙げられている。
しかしどれも「10月の突然死」を説明しきれない。
7〜9月は壮絶な酷暑だったが、持ちこたえていた牡蠣がなぜ10月に崩れたのか。
例えば瀬戸内海が急に低酸素になる――そんな劇的な変化が、どうすれば起きるのか。
説明のピースが足りていない。
この 釈然としなさ は、多くの養殖業者が共有しているはずだ。
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歴史は同じ問いを繰り返す
自然と産業の大崩壊は、過去にも何度も起きた。
- 北海道のホタテ大量死
- フランスの葡萄を壊滅させた フィロキセラ(害虫)
- ヨーロッパヒラガキ を滅ぼしたウイルス
ヨーロッパの牡蠣産業は、病気に強い日本の マガキ を導入して再生した。
いま欧州で食べられている牡蠣の多くは、日本から渡った血統である。
歴史が示すのは、ひとつだ。
自然の大災害は、いつも「説明できないまま始まる」。
もし今回の出来事が病原体によるものなら、事態は深刻だ。
そして特定には時間がかかる。
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現場の養殖業者には時間がない
「そういうこともあるよね」と言って済ませられる話ではない。
今年の売上は壊滅的だし、来年以降はさらに厳しい。
牡蠣は5~6月に産卵し、ホタテ殻に付着させて次の世代を育てていく。
今年親牡蠣が死んでしまったぶん、来年・再来年の生産にも影響が確実に出る。
つまり、この問題は「今年がダメだった」ではなく
少なくとも2~3年にわたるダメージである。
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だからこそ「サバイブオイスター」を食べて応援したい
僕らは専門的な研究もできないし、運転資金を融通することもできない。
でも、ひとつだけできることがある。
生き残った牡蠣を食べること。
それが、養殖業者の次の一手を支える力になる。
サバイブオイスター。
過酷な海を生き延びたツワモノの牡蠣たちだ。
今年の牡蠣は数が少ない。
だがその分、一粒には物語がある。
僕らは、その物語を味わうことで、海と人の営みを応援できる。
牡蠣はただの食材ではない。
誰かの人生の結晶なのだ。
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最後に
いずれ原因究明は進むだろうし、対策としての技術開発も進むだろう。
でも、その前に、今ここで支えなければならない。
だから僕は言いたい。
今年の牡蠣を食べよう。
生き残った牡蠣を讃えよう。
サバイブオイスターはきっと今年じゃなければ食べることができない。